球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

闘士ミラー氏の遺志に反する殿堂投票結果は

[ 2013年11月10日 06:00 ]

 野球名誉の殿堂は先週、特別委員会が選ぶ殿堂入り候補者を発表した。「ボス」ジョージ・スタインブレナー・ヤンキースオーナーやジョー・トーリ、トニー・ラルーサら名監督と並んで元選手会専務理事マービン・ミラー氏の名が挙がって「問題」が起こった。ミラー氏は昨年11月、95歳で亡くなったが、生前殿堂入りを拒否していたからだ。

 ミラー氏の大リーグへの貢献は絶大だ。1966年から16年間選手会トップとしてオーナー独占の経営システムと戦った。年金制度改革、年俸調停制度、FA制度を勝ち取り、選手とオーナーのウイン・ウインの関係をつくり、巨大娯楽産業大リーグの道を開いた。

 しかし、特別委員会のメンバーはミラー氏を「悪魔」と呼んだ旧経営側の人物ばかり。10年間6回の投票全てミラー氏を落とした。07年の投票結果は「名誉(フェイム)の殿堂ではなく恥(シェイム)の殿堂」とファンとメディアに酷評された。在任期間がミラー氏と重なり、労使問題でミラー氏に全敗し「無能」とされたボウイ・クーン元コミッショナーが委員12人のうち10票で殿堂入り、ミラー氏が3票という偏見投票だったのだ。

 これでは殿堂の権威に関わる、と殿堂では特別委員を選手、記者のOBへと入れ替えてきた。そんな流れの中でのミラー氏のノミネートだが、ミラー氏の娘スーザンさんと鎌倉に住む息子ピーターさんは「父は生前、殿堂に手紙を送り、ノミネートしないよう頼んだ。遺志の無視」と憤る。

 手紙は殿堂を球界権力者の象徴、とするミラー闘士の反骨だろう。特別委員会の「野球史全体を考慮した投票」結果は12月4日に発表されるが、どうなるか…。

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