球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

大一番でも守られた“合法的”サイン盗みの伝統

[ 2013年9月15日 06:00 ]

 オリオールズとヤンキースは、ワイルドカードでのプレーオフ進出に首の皮一枚の可能性を残して争っている。両軍が何としても勝とうとあらゆる手段を尽くすのは当然だ。9日の直接対決で両監督が衝突した。

 ベンチからオ軍の三塁コーチに「何をしているか分かっているぞ」とやじっていたヤ軍のジョー・ジラルディ監督が初回終了後に球審に抗議を始めた。オ軍のバック・ショーウォルター監督が飛び出して「ウチのコーチに文句をつけるのか」。審判団と選手が2人を引き離した。判定への抗議でなく、監督同士の衝突なのが珍しい。

 ジラルディ監督が「大事な試合では見過ごせないことがある」と言えば、ショーウォルター監督は「ヤ軍が“サイン盗みのうまいチームなのは球界の常識”とOB選手のブログにあったが、同意する」。ショーウォルターはヤンキースの監督だったから間違いなさそうだ。両監督が直接「サイン盗み」と言わないのがおかしい。

 70歳のテレビ解説者、ルー・ピネラがズバリさばいた。「サイン盗みは昔からの野球の一部。だからサインを変えるのだ。機構から警告が来たら“ハイ、従います”で、終わり。ワシかい?選手時代、コーチ時代、監督時代、いつもやったよ」。イチローの大リーグ最初の監督として日本のファンにもおなじみだろう。ピネラもまたヤンキースの選手、監督だった。

 サイン盗みはすべてのチームの後ろめたいプライバシー。だから、抗議は決定的場面でだけに限り、選手はトレードでチームが替わってもその方法をしゃべらない…、これが不文律とか。大事な試合で監督間に飛び散った火花、良き伝統は守られていた。 (野次馬)

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