球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

五輪拒否で露呈した大リーグのビジネス主義

[ 2013年6月2日 06:00 ]

 2020年の夏季五輪で野球・ソフトボールが復帰できるのか。最終結論は9月の国際オリンピック委員会(IOC)総会だが、難しいだろう。「最高の選手が出場しない競技は五輪に出ようなどと考えない方がよい」とのコメントはジャック・ロゲIOC会長から野球に向けられたもの。しかし、バド・セリグ・コミッショナーは最近のAP通信スポーツ編集者との会見でも「8月はペナントレースの最中。ファンに五輪のために中断するなどとは絶対に言えない」と、にべもない。

 メディアもファンもソフトボールには同情するが、大リーグの試合は本拠地都市のファンのもの、と言う。国際スポーツではなく地域に根差した偉大なローカルスポーツなのが野球の良さ、と言う。

 それで年間利益5500億円、コミッショナーの年俸20億円の大娯楽産業になった。国際試合はMLB自前のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)があるし、IOCの“商売”に協力してもメリットなし、とはっきりしている。大リーグの2つの顔がスポーツとビジネスだが、五輪拒否にビジネス面が露骨に顔を出す。

 お金の話であきれられた最近のエピソードを。球団職員の年金制度を全球団で廃止しようとの案だ。大もうけの球団が勤続20年以上の職員のささやかな年金も廃止とは強欲資本主義だ、とメディアが非難した。さすがに5月初めのオーナー会議で年金制度存否はそれぞれの球団に任す、となったが、こんな組織であってみればコミッショナーが「私が球団経営をしていても五輪に選手は出さない」と断言するのは当然だ。

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