球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

球界追われた権力者を待ちうける訴訟の嵐

[ 2017年12月31日 05:30 ]

 大リーグの舞台裏で最も権力を持っていた経営者が大リーグ機構(MLB)と30球団からの圧力で退任した。ボブ・ボウマン氏(62)、17年前にMLBと全球団が出資して立ち上げた新会社、大リーグ・アドバンスドメディア社(BAM)の最高経営責任者(CEO)だ。ミシガン州の財務担当、複合企業体ITT(元国際電話電信会社)CEOを経て、新会社に招かれた。それは「球界だけでなく、米国ITビジネスの成功物語となった」(バド・セリグ前コミッショナー)。

 ところが11月初め、MLBは「ボウマン氏は任期終了により本年末で退任」とそっけなく発表した。2カ月後、ウォールストリート・ジャーナル紙がその背景を暴露した。「長年にわたる“不適切な行為”による追放」だという。ボウマン氏のパワハラ、セクハラは球界上層部の間では周知の事実だったという。だが、ボウマンCEOがもたらす多大な利益が皆の口をふさいでいた。10月、職員に対するパワハラ問題がロブ・マンフレッド・コミッショナーに報告されたのを機に、球界はボウマン氏を退任へと追い込んだ。

 ボウマン氏の功績は、試合をファンのスマートフォン、タブレットに届けるシステムを構築したことだ。契約者は全てのメディアに広がり、利益は毎年数百億円に達していた。「私の個人的欠陥による言動で多くの人に多大な迷惑をかけた。謝罪する」とボウマン氏。各界の追放者と同じコメントだが、今後待っているのも同じ、被害者からの訴訟の嵐ではなかろうか。(野次馬)

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