球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

台風被害から生まれた“ホーム試合交換”の誤解

[ 2017年9月3日 05:30 ]

 大災害では人々の神経はとがり、小さな誤解で大騒ぎになる。先週、テキサス州をハリケーンが襲い、アストロズの本拠地ヒューストン市は豪雨で水没した。

 ロードに出ていたア軍は本拠地開催は無理と判断し、8月29日から31日のレンジャーズ3連戦を、レ軍の本拠地アーリントンで9月25日から27日に組まれている3連戦と“交換”できないかレ軍に相談した。交換成立と思えたが、レ軍はプレーオフ進出に望みがあり前売りは完売。試合を交換すると9試合のロード試合が12試合に延びる。「地元ファンへの義務とチームの利益を考えるとノー」とレ軍。ア軍は納得し、8月末の3連戦をフロリダ州セントピーターズバーグのレイズのホーム球場でやることでレ軍と合意した。

 結果はア軍1勝2敗、観客は3試合で1万人ほど。首位独走のア軍がヒューストンで試合をしていれば9万人超は堅かったが、ホームに帰ったア軍は状況処理に見事な手際を発揮した。1日からのメッツ3連戦を2日のダブルヘッダーと3日の1試合に変更。空いた1日に市内の避難所で各試合5000枚の優待券と、チームジャージー1万着を配布。レ軍と共に義援金数億円を寄付した。

 ところが“ホーム試合交換”が漏れて騒動発生。「レンジャーズは同じテキサス州の球団の苦境を助けなかった。名誉あるテキサス州旗をユニホームに付ける資格はない。州旗ロゴを剥奪せよ」との州当局への請願運動がネット上で起こった。「レンジャー」は、テキサス州がメキシコに支配されていた1830年代から続く伝統の警備保安組織で、その州旗「ローン・スター=一つ星」はテキサス州民の誇りだ。

 州当局もメディアも、拡大する被害対応で球界内の事情説明どころではない。被害の全貌が分かり、復興に踏み出せば自然と騒ぎは収まると思うが、どうだろう? (野次馬)

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