球拾い―大リーグのこぼれ話伝えます―

“マーリンズ売り逃げ”がオーナー最後の大仕事

[ 2017年7月9日 05:30 ]

 オールスター戦は11日(日本時間12日)、マーリンズ・パークで開催される。球宴で沸くマイアミ市とマイアミ・デード郡だが、デード郡のカルロス・ヒメネス市長は苦い顔だ。5年前に約650億円かけて造った開閉式ドーム球場が“負の遺産”になっているためだ。

 新球場はマーリンズのオーナー、ジェフリー・ロリア氏の両自治体への売り込みで建てられた。キューバからの亡命者が多数住むリトル・ハバナ地区再開発の起爆剤、と政治家たちが飛びつき、建築費の80%強に税金が使われた。球場内売店収入は球団へ、球場建設公債償還の巨額な費用も郡と市が引き受ける…。あまりに一方的な契約と地元紙は怒り、反オーナーの論陣を張り市民運動が続く騒ぎ。

 ファンは新球場にもそっぽを向き観客動員は低迷した。しかし、新球場でマーリンズの資産価値が上がり、ロリア氏はチームの売り時と判断した。「市と郡は巨額の債権償還費を抱えた。その一方でロリア氏は大金をポケットに入れて“さよなら”か」とヒメネス市長。新球場に反対した数少ない政治家の一人だっただけに、怒りは増すばかり。

 4月に報じられた売値の16億ドル(約1820億円)は、12億ドル(約1370億円)に下がり、買い手候補は3グループ。仲介経費を惜しむロリア氏が、売却の橋渡しを専門とするコンサルタント会社を外したため、球宴までに決まるとされた身売り先も迷走中。5月までに売却が済んでいれば売却益の5%を郡と市が受け取る契約(安く見積もっても約60億円)も無効に。勘ぐればこれもロリア氏の倹約策だったのかもしれない。

 ロリア氏はスター選手売却、補強用の収益分配金の私的流用等で悪評ばかり。最後の大仕事が“マーリンズ売り逃げ”になるらしい。 (野次馬)

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