復興へのプレーボール~陸前高田市・高田高校野球部の1年~

“復興酒”喜びの初出荷へ 「酔仙」17日から発売

[ 2011年10月13日 06:00 ]

間借りしている酒蔵で仕込みの作業をする酔仙酒造の蔵人たち

 震災で従業員を7人失い、酒蔵なども壊滅的な被害を受けた陸前高田市の酔仙酒造が12日、震災後初の商品「雪っこ」の出荷に向け、仕込み作業を行った。同社は同業の岩手銘醸の協力で一関市千厩町の玉の春工場を借り受け、8月22日から酒造りを開始。17日の店頭発売を前に、急ピッチで作業を進めている。製造部の金野泰明さん(35)は「準備に時間がかかりましたけど、よくここまで来たな、という感じです」と感慨深げな様子で話した。

 この日行われた仕込みは、大きな蒸籠(せいろ)のような甑(こしき)の中に入れた180キロの米を、約100度の蒸気で蒸した後、放冷機に移して冷却するというもの。今後、発酵、搾りといった過程を経て製品化される。金野さんは「酒造りには酒屋万流という言葉があるように、蔵によって造り方はそれぞれ。慣れるのに時間がかかりました」と操業再開直後は以前の自社の施設との違いに戸惑ったという。それでも出荷を待つ消費者のために、丹精込めて仕込みを行い、ようやく出荷にこぎつけた。

 ただ「雪っこ」の出荷はゴールではない。今後、同社の代表的銘柄で全国的にもファンの多い「酔仙」の仕込み作業も並行して行う。こちらは長期間の熟成期間を要するため、左党の手元に届くのは来秋となる見込み。さらに、いずれは以前のように陸前高田市に酒蔵を建てたいという夢もある。金野さんはこう話す。「例年通り酒を販売できることはうれしい。でも10年、20年と恒久的に営業ができるようにならないと」。岩手県を代表する酒造会社は、真の復興を果たすまで歩みを止めない。

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