復興へのプレーボール~陸前高田市・高田高校野球部の1年~

進まぬ復旧 戸羽市長「被災者はあす起きても被災者」

[ 2011年9月12日 06:00 ]

復興へスピードが大事と訴える戸羽市長

 3・11から半年。陸前高田市では岩手県知事選、岩手県議選、陸前高田市議選が行われた事情もあり、自治体としての追悼式などは行わず、震災発生の午後2時46分にも防災サイレンなどは鳴らさなかった。曇天の日曜日、市民らは静かな一日を過ごした。

 津波で全壊した高田高校はいまだほぼ手つかずの状態のまま。校舎裏の野球部グラウンドには仮設住宅が建築され、高校再建のメドは立っていない。こうした現状について、本紙の取材に答えた陸前高田市の戸羽太市長(46)は「市内で唯一の高校で(街の)シンボリックな存在」とし、岩手県側と再建案を協議していく方針。全壊した病院や福祉施設、高田高校などを1カ所にまとめ、市民の利便性を高めていくプランがあることも明かした。

 人口約2万5000人の陸前高田市の犠牲者は実に1633人。行方不明者は264人、76人を確認調査中だ(いずれも同市調べ)。がれきの撤去作業はわずかながら進んではいるものの市内のあちこちには木材、金属、車などが種類ごとにうずたかく積まれている。かつての中心部はさら地に近い状態だが復旧・復興にはほど遠い。

 警察による行方不明者の捜索も継続中。市内の避難所は全て閉鎖され、仮設住宅への入居が進んでいるが、慣れない環境に戸惑う人も多い。

 妻を津波で失った戸羽市長は「(国は)スピード感というものをどう捉えているのか。被災者はあす起きても被災者。“(復興資金の)財源の方向性を決めるまでは何もできない”では駄目」と政府の対応の遅れを批判。「スピード感、(首相の)リーダーシップが大事」と重ねて指摘していた。

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