復興へのプレーボール~陸前高田市・高田高校野球部の1年~

気丈に支える女性部長 自腹でスペシャルドリンク

[ 2011年5月12日 06:00 ]

陸前高田市内 近所の高田一中から太鼓を借りる佐藤聖也選手(右)とともに試合の準備をする奥村部長

 高田高校野球部の部長を務めるのは英語教諭の奥村珠久子(しゅくこ)先生(38)だ。昨年までは副部長として部員たちを見守ってきたが、今年度から部長に就任。それに加え、10日に入学式を迎えた1年生の担任でもある。この日は終日、自身が受け持つ38人の生徒と個人面談を行った。生徒には事前に身辺情報を記入させ、卒業した中学校から申し送りも受けた。それでも、突然「津波で両親が流された」と告白する子もいるという。

 「何の前触れもなく、冷静に淡々と話すんです。まだ15歳なのに」。生徒の心の傷を案じる奥村部長自身も津波で家を流された被災者。震災直後は大船渡東高校の学生会館で他の教諭と共同生活を余儀なくされ、現在は大船渡市内の教員住宅で暮らし始めた。通常の学校業務、生徒たちのカウンセリング、野球部長としての仕事。抱える責任は大きいが、「これが仕事ですから」と気丈だ。

 部員は現在、栄養不足にならないようにと牛乳や豆乳にプロテインを混ぜてつくる「震災スペシャル」と言われるドリンクを飲用している。そのプロテインも奥村部長自らが自腹で提供。私生活は「ないですね」と笑う女性部長が野球部を支えている。

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