桜井克也の球界“人”筆書き

広島・磯村 “行い”が呼び寄せた松坂との初対面 実力磨き再会を待つ 

中日・松坂との“再会”を心待ちにする広島・磯村
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 思いがけない幸運に恵まれた時、人は「日頃の行いが良いから…」などと口にします。日常の善行や努力の積み重ねが幸運や、いい結果を引き寄せる。正直、因果関係は良く分かりませんが、この男の身に舞い降りた幸運を考えると、その通りだと認めざるを得ません。広島の磯村嘉孝捕手(25)です。

 話は3年前の2015年まで遡ります。当時、2軍野手コーチ補佐だった東出輝裕現打撃コーチとソフトバンク移籍初年度だった松坂が会食の約束をしていました。同い年で親交がある二人。久々の再会にあたり、当初はそれぞれ知人を呼び、四人で席を持つ予定でしたが、直前で松坂側に一人、欠員が…。店自体はすでに四人で予約が入れてある。連絡を受けた時、東出の近くを偶然、通りかかったのが磯村でした。

 「行く?」

 「行かせて下さい」

 もちろん、その段階で磯村は松坂との面識はありません。甲子園大会優勝メンバーという共通項はあるものの「レベルが違いすぎます。雲の上の存在ですよ」と憧れを遙かに通り越している存在。それでも反射的に即答していました。

 「松坂さんから見たら“誰?”ですよ。でも、なかなかそんな機会ないじゃないですか?日本でもメジャーでもすごい実績を残されて、そんな人の話や考え方をいろいろ聞いてみたい。完全に場違いだなとは思いましたが、深く考えずに“行きます”って答えちゃいました」

 意気込んで答えたものの、店に向かうまでに緊張の度合いは深まっていきます。そして席に着くと、緊張はピークに…。「“食べたいものある?”とか、気を使って頂いてばかりで…。質問なんてできませんよ」。優しくされれば、されるほど体は硬直していくばかり。博多名物・水炊きの店だったそうですが「おいしかったとは思いますが…」と味は覚えていません。ほぼ聞き役で、当初の目的を果たすことはできませんでしたが、その中でも感じることは無数にありました。

 「あれだけの人でも、いろんな人の話を聞いて、いろんな人の練習や日頃の取り組みを見て、感じて、取り入れていく。チャレンジ精神があるというか、謙虚というか…。“これでいい”ではなく、常に向上心を持って野球に取り組む。自分にも絶対に、それが必要だと感じました」

 その年は1軍で1試合の出場にとどまりました、翌年の16年はシーズンの大半を1軍で過ごし、24試合に出場。17年にはプロ初本塁打を記録するなど、打撃面でも進化を見せました。“あの日”が成長の土台となっていることは間違いありません。

 広島捕手陣は12球団一の陣容だと言っても過言ではないでしょう。ベテラン・石原を筆頭に正捕手としての地位を固めつつある会沢。若手では打撃力に定評のある2年目・坂倉、そして鳴り物入りで入団したドラフト1位・中村奨など。ベテラン、中堅の壁は高く、下からの突き上げも激しい。その中で8年目の磯村は今季、開幕から1軍に居続け、確かな存在感を見せています。「坂倉も中村も打撃もいいし、肩の強さ、足の速さも含めて身体能力が高い。僕にはないものをたくさん持っていますよ」と笑いますが、負ける気などありません。

 「優勝も経験させてもらったし、ベンチからでもたくさんの選手を見させてもらってきた。そういう部分を生かして行きたい。今はチャンスを頂いていますが、僕は一つのチャンスを逃したら、そこで終わり。何とか1年間、1軍に食らいついて、チームの3連覇に貢献したい」

 正捕手を目指してひたむきに練習する。そのうえで若手にとっての「壁」であり続けることが目標です。

 真摯(しんし)な態度で練習に取り組み、出番のない時でもベンチから、ひときわ大きな声を出す。入団以来、変わることのない野球への姿勢は周囲も高く評価します。そう「日頃の行いが良い」から偶然、東出に声をかけてもらうことができ、松坂と出会うこともできたのです。16年以降、1軍での出番が増えた磯村に対し、松坂は右肩の故障などで治療、リハビリ等の時間が増えたため、あれ以来、接触はできていません。ともに1軍で活躍する今季、接触はおろか対戦の可能性だってあります。「覚えておられるか、どうか…」。ほんの少しの心配を胸に、いつもと変わらない姿勢でその時を待ちわびています。

[ 2018年4月11日 17:58 ]

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