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日本記録のシーズン354奪三振を記録した江夏。自らサヨナラ安打を放って試合を決め、ファンに祝福される
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【阪神1−0巨人】勘違いによって、8人の打者を打たせてアウトにしなければならなくなった。
直球とたまに投げる“曲がらない”カーブだけで、ここまで22勝、345個の三振を奪ってきた阪神・江夏豊投手。弱冠20歳の怖いもの知らずの若者は、首位攻防の天王山となる4連戦の初戦、甲子園での阪神−巨人20回戦にチームの勝利と自らの奪三振日本新記録達成を目指し、マウンドに上がった。カレーライスとレモンスカッシュ。それが若者の力の源となる夕食だった。
江夏の1球1球に5万5000人の大観衆が歓声をあげる。1回、巨人の攻撃。1番・高田繁左翼手、3番・王貞治一塁手が三振。上々の立ち上がりだ。2回、4番・長嶋茂雄三塁手も空振り三振。3回、9番・高橋一三投手から6個目三振を奪うと、まずは1955年に金田正一投手が達成したセ・リーグ記録350奪三振を更新した。金田が400イニングかかったのに対し、江夏は272イニング。恐るべきハイペースだった。
日本記録は61年、稲尾和久(西鉄)の353個。達成は時間の問題だった。だが、誰から奪うか。長嶋は先輩投手・村山実の永遠のライバル。ならば、と江夏は王に照準を合わせた。
4回、王の第2打席。カウント2−1から、カーブで三振に仕留め、これで稲尾とタイ記録。ところが、江夏は新記録と思い違いし笑顔でベンチに戻ると、女房役の“ダンプ”辻恭彦捕手に言われた。「まだや、まだタイ記録やで」。
ここから打者8人三振を取らずに王まで新記録の舞台を残さなければならなくなった。問題は投手の高橋一三の場面。三振をさせないように、低めの真っ直ぐで二ゴロで片付けた。
7回、三たび王が左打席に入った。今度は三振以外考えられない。初球は外角低めいっぱいの直球でストライク。2球目は真ん中やや低めのカーブを一塁側へゴロのファウル。3球目は高めに1つ外した。4球目。真ん中高め、見逃せばボールのはずだったが、王は強振。バットは空を切った。354個目のシーズン奪三振。公約通り、王で新記録を達成した。
試合は延長12回、その江夏がサヨナラ右前適時打を放ち、投打でワンマンショーの活躍。73年のノーヒットノーランの時もそうだが、延長戦で13個の三振を奪い完封、自らのバットでケリをつけた。
江夏伝説は続く。中1日で巨人23回戦に先発。4安打10奪三振で対巨人シーズン5度目の完封勝利(阪神3−0巨人)。江夏の奮投も報われず、阪神は巨人のV4を許したが、江夏は結局、シーズン401奪三振で、日本はおろか大リーグ、ドジャースのサンディ・コーファクス投手の持つ382個を塗り替え、世界記録を樹立した。