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本塁打を放った長嶋は前代未聞の一塁ベース踏み忘れで投ゴロに。長嶋らしいといえば、長嶋らしいルーキーイヤーの思い出だ
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【広島4−2巨人】ミスター・ジャイアンツ、長嶋茂雄三塁手の現役通算本塁打は444本。しかし、本来はあと1本多く445本の記録が残るはずだった。
後楽園球場での広島23回戦の5回二死、ルーキーながら4番に座る長嶋は、広島の先発・鵜狩好応(後に道夫)投手と対戦。内角高めをたたいた打球は、左中間へのライナーとなってぐんぐん伸びた。
フェンス直撃か、それともスタンドインか、長嶋は全力疾走して一塁を回った。1万8000人の歓声が上がり、ようやく本塁打と気付いた長嶋。今度はゆっくりとダイヤモンドを回り生還。シーズン28号、勝ち越しの本塁打、だったのだが…。
長嶋がベンチでナインの祝福を受けている最中、広島の藤井弘一塁手が鵜狩にボールを渡すよう求め、受け取った藤井は一塁ベースを踏んで竹元勝雄一塁塁審にアピールした。「アウト!」。竹元塁審は右腕を高々と上げて宣告した。
何なんだ、何でアウトなんだ?巨人・水原茂監督、長嶋本人が竹元塁審に詰め寄る。「長嶋君の右足が一塁ベースの3寸(約9センチ)ぐらい前を蹴っていったのを完全に見た。藤井君がベースを踏んでいないとアピールしてきたので認めた」と竹元塁審は、自信満々の顔で答えた。
当の長嶋は「僕は踏んだつもりでいるが、あの時は全力疾走していたので、はっきりとはいえない…」と心もとない弁解。長嶋の代名詞でもあった全力疾走が、皮肉にも前代未聞の珍プレーを呼んでしまった。
結局、記録は投ゴロ。得点はもちろん、本塁打は取り消しとなった。試合はこの長嶋の“左越えピッチャーゴロ”から流れが変わり、広島・大和田明左翼手の2本の本塁打でカープが勝利を収めた。優勝目前の巨人にとってそれほど大きな敗戦ではなかったが、巨人は広島に4連敗となった。
07年8月末まで、走塁ミスで取り消しになった本塁打は計12本。81年7月19日、広島のアート・ガードナー左翼手が横浜スタジアムでの大洋(現横浜)12回戦で3点本塁打を放ちながら、本塁を踏まずに取り消されたが、記録は三塁打で2点は認められた。70年以上のプロ野球史上、一塁ベースを踏まずに投ゴロとなったのは、この長嶋の一発以外にない。
長嶋はこの年、打率3割5厘、盗塁37をマーク。本塁打は29本で、このベース踏み忘れがなければ「3割30本30盗塁」のトリプルスリーを達成していた。記憶に残る天才打者にとって、トリプルスリーなんて、あまり関係ないかもしれないが…。