“育成の星”広島・中村貴浩 14打席目のプロ初適時打 新井監督も絶賛「ルーキーらしからぬ対応力」

[ 2023年5月25日 06:30 ]

セ・リーグ   広島6―2中日 ( 2023年5月24日    マツダ )

<広・中>ヒーローインタビューで九里(左)、西川(右)に手を掲げられる中村貴 (撮影・奥 調)
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 広島・中村貴浩外野手(23)が24日の中日戦でプロ初の適時打を放ち初打点を記録した。3回2死一、二塁から右前打して6点目を呼び、連敗を3で止め勝率5割に戻す勝利に貢献した。育成ドラフト2位で入団したルーキーは17日に支配下選手契約を締結。23日の同戦でプロ初安打を放つなど、売り出し中の若手が連夜の活躍で存在感を示した。

 自らのポジションを知る男が必死に食らいついた。5―0の3回2死一、二塁。中村貴はカウント1―2から外角低めに沈むシンカーに反応し巧みなバットコントロールを繰り出した。最後は右手一本で右前に運び6点目を呼び込んだ。

 「何とかバットに当てられて、いいところに落ちてくれた。今日はちょっとは(勝利に)貢献できたと思うので明日からも貢献できるように頑張りたい」

 デビュー戦となった19日阪神戦から数えて14打席目でプロ初の適時打。長打力が売りだが、この日は、新井監督が「カウントによって対応の仕方を変えたり、ルーキーらしからぬ対応力」と絶賛した器用な打撃で本拠地のファンを沸かせた。

 昨秋の育成ドラフト2位で入団し今月17日に支配下選手契約を締結。前日23日の中日戦でプロ初安打を記録した勢いのまま、さらなる活躍を見せた。いまだに背番号97のホーム用ユニホームが間に合わず、育成時代の123番を背負ってプレー。「123番をつけて1軍の試合に出られるのもあまりないので、レアだなと思う」と笑顔をのぞかせた。

 九産大時代に野球を辞めようと思ったことがあった。毎日欠かさず居残り練習を行うなどチーム一の真面目な男が挫折を味わったのが3年夏。リーグ戦前のオープン戦で極度の打撃不振に見舞われた。ある試合の打席で見逃し三振の判定を受けると、鬱憤(うっぷん)がたまっていたこともあり、不満の表情を浮かべた。見ていた大久保哲也監督から注意を受けると、翌日に同監督のもとを訪れ、泣きながら「野球ができません…」と初めて弱音を漏らした。

 この時は周囲からの励ましもあり、何とか立ち直った。その後も全体練習後は居残りで約2時間の打撃練習を続けた。あれから約2年。今は1軍の舞台に立てていることに大きな喜びを感じている。

 初めて上がった本拠地のお立ち台。2万3285人から大歓声を受け「うれしい気持ちでいっぱいです」と、つかの間、余韻に浸った。育成の星へ――。ここから中村貴のサクセスロードは始まる。(長谷川 凡記)

 ☆生まれ&サイズ 2000年(平12)4月9日生まれ、福岡県出身の23歳。1メートル77、85キロ。右投げ左打ち。

 ☆球歴 小学1年時に松原ライオンズで野球を始め、中学では筑後ドジャースに所属。九州国際大付1年夏に背番号13で甲子園ベンチ入りも出場なし。九産大では1年秋からベンチ入りし3年秋の福岡六大学野球リーグで本塁打と打点の2冠。大学通算12本塁打。22年育成ドラフト2位で広島に入団し、今月17日に支配下昇格。

 ☆こだわり 西川のマットレスと枕を愛用。寝具にこだわり。睡眠は最低6時間。

 ☆縁 九産大1年時に元ソフトバンクの川崎宗則氏と対面。人見知りであいさつができず「あいさつは?」とツッコまれた。ドラフト指名後には「頑張ってこい」と激励を受けるなど交流がある。

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