ソフトB・和田はなぜこんなにも勝てるのか 同期入団の稲嶺スカウトが語る42歳左腕の「スゴさ」

[ 2023年5月23日 06:00 ]

キャッチボールを終え笑顔の和田(撮影・岡田 丈靖)
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 ソフトバンク和田毅投手(42)が、24日の日本ハム戦(エスコン)に先発する。2003年から重ねた通算投球回は残り2イニングで現役4人目となる節目の2000投球回を達成する。勝利すれば通算勝率・653で、プロ野球歴代3位にランクインする偉業だ。同期入団で球団の関西地区アマスカウト・稲嶺誉氏(42)が、左腕が勝ち続ける“必然”の要因を掘り下げた。

 17日の楽天戦(山形)は13年ぶりに地方球場で先発した和田は、今季最長6回1失点で3勝目(1敗)を挙げた。中6日で迎える24日の日本ハム戦(エスコン)で2イニングを投げれば通算2000投球回となり、通算勝率の“規定”に到達する。勝利投手になれば通算154勝82敗の勝率・653となり斎藤雅樹(巨人)の・652を上回って、藤本英雄、稲尾和久に続く歴代3位にランクインする。

 残り2イニングと迫った和田の“誉れ”を前に、両打ちの内野手として活躍した同期入団の稲嶺スカウトが、高い勝率の要因を語った。

 「毅(和田)は毎年、勝負してますよね。フォームをまず、考えて変えたり。結果が出ているのに変えるのは勇気がいるんです。そこで打者が読めなくなるんじゃないかな」

 印象深いのはプロ1年目の紅白戦。稲嶺氏は和田と対峙(たいじ)した。当時から代名詞といえる独特の腕の振りで、球の出どころをギリギリまで見せない投球。「絶対にファウルになるんです。カウントが不利になる。今も試合を見ても打者が狙って打ってもファウルになっている」。歳月は過ぎたが、攻略の答えは出ない。「(投球時に)右足の着地のタイミングや軸足の粘りを微妙に変えて打たせてますよ」。その難易度を解説する。

 分かりやすくいえば、じゃんけんだ。「じゃん・けん・ぽんではない。タイミングは、じゃん・け・ぽんぐらい。後手後手になる」。打者はもう開き直るしかない。「じゃんけんに負けに行く感じで、球種を読んで裏の裏をかいて。勝った(打った)らよっしゃーみたいな。常に(打席で)考えさせられると思います」。“先出しじゃんけん”で振らなければ、対応できない投球術が42歳現在も変わらないのだという。

 たゆまぬ努力を見続けてきた。「入団時には動作解析などはなかったが、和田は筑波大に勉強に行っていた。4年前くらいに“各球場のマウンドが硬くなった”と言って“広背筋で投げるんだ”と。いきなり背中(の筋肉)を大きくした。常に進化を求めてトライしている。素晴らしいです」と誇らしげだ。

 和田はこの日、ペイペイドームで調整し、午後には北海道入り。幾度となく繰り返したルーティンで黙々と汗を流していた。大台到達を前にしては「長くやってきていますからね。次は(2回で)ノックアウトされないように投げたい」と語っていた。42歳はジョークにも深みがある。(井上 満夫)

 ○…日本通算2000投球回はこれまで92人が記録したが、最年長到達は16年8月27日中日戦の黒田博樹(広)で41歳6カ月。現在42歳3カ月の和田(ソ)が今週達成すれば9カ月更新する。なお、最年少到達を見ると、金田正一(国鉄)が56年5月2日中日戦で残した22歳9カ月。  

 ○…ホークスで2000イニング以上を投げた投手は過去4人。そのうち、チーム在籍時に1イニング目から2000イニング目までを記録したのは、皆川睦雄(3158回)、杉浦忠(2413回1/3)、三浦清弘(2017回1/3)と南海時代の3人で、最後に達成したのは72年8月13日近鉄戦の三浦。

 ◇稲嶺 誉(いなみね・ほまれ)1980年(昭55)10月21日生まれ、沖縄県糸満市出身の42歳。沖縄水産では新垣渚とともに3年時に春夏連続甲子園出場。東農大生物産業学部(現東農大北海道オホーツク)から02年ドラフト8巡目でダイエー(現ソフトバンク)に指名された。プロ通算92試合、打率・183、9打点。14、15年は2、3軍で内野守備走塁コーチを務めた。

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