セ界一の守備範囲支える阪神・中野の3メートル 関本賢太郎氏が分析「右方向の打球はなかなか抜けない」

[ 2023年5月23日 07:30 ]

二塁・中野の走者なしの時の守備位置
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 阪神の首位快走に貢献する中野拓夢内野手(26)の二塁守備について、二塁手連続守備機会無失策のセ・リーグ記録を持つ阪神OBの関本賢太郎氏(44=本紙評論家)が分析した。他球団の二塁手と比較して約3メートル深いポジショニングを最大の特長に挙げ、ゴールデングラブ賞を昨季まで10年継続する広島・菊池涼介内野手(33)の強力な対抗馬になり得るとした。

 二塁・中野の最大の武器は守備範囲の広さだ。他球団の二塁手の定位置が中野にとっては併殺シフトの位置で、定位置はさらに3メートルくらい深い。これほど深く守っているのは広島・菊池くらいでは。打者は右方向の打球はなかなか抜けないと感じているはずだ。単純な守備範囲では、10年連続ゴールデングラブ賞の名手・菊池よりも広いといえる。

 走者一塁から右方向への安打で一、三塁へとピンチが広がるケースが減っている。一塁走者の頭にも中野の深い守備位置が入っているから三塁を狙うことを自重するからだろう。当然、一、二塁と一、三塁では失点リスクも大きく変わる。チーム防御率にも中野の守備が大きく貢献しているとみている。

 広い守備範囲を可能にしているのがフットワークと打球判断力だ。しっかりとした脚力が前後左右の動きを支え、的確な打球判断が1歩目の速さにつながっている。遊撃での経験をムダにしていない。投げる距離が短くなって「早く投げなければ」という気持ちの焦りがなくなったことが安定感を生んでいる。

 遊撃から二塁へのコンバートは決して容易ではない。一、二塁間へスライスしていく性質の打球は遊撃にはないもの。右左の動きそのものも違うし、送球する目標に対する角度も違う。特に一、二塁間の打球を捕って回転しながら投げる際は遠心力がついて悪送球になりがち。11日のヤクルト戦での今季初失策も、この状況だった。

 現役時代は05~07年に二塁で「804」連続守備機会無失策のセ・リーグ記録をつくった。その間、一塁や三塁での失策はあったから全く意識していなかった。残り「10」くらいとなったところで新聞で記録を知ってからは緊張した。「804」で途切れたプレーも覚えている。一、二塁間の打球をダイビングキャッチし、ベースカバーの投手に送球した。しっかり胸のところに投げられたが、投手が目線を切って落球。送球エラーがついた。いいプレーのためには周りとの呼吸が大事になってくる。

 中野は20、21日の広島戦では2試合連続失策が付いたが菊池にも失点につながる今季初失策があった。数を意識するのではなく、守りの怖さを感じ、その壁を克服して、さらに上達を目指すことが大切だ。その意識で取り組めば、ゴールデングラブ賞も近づくのでは。(本紙評論家)

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