【内田雅也の追球】ノックにはない「実弾」 拙守3度も佐藤輝には最高の練習

[ 2023年3月15日 08:00 ]

オープン戦   阪神11―6DeNA ( 2023年3月14日    横浜 )

<D・神>8回、一塁へ悪送球する佐藤輝(撮影・木村 揚輔)
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 阪神が失った6点のうち5点までが守備のミスが絡んでいた。なかでも目立ったのは三塁手・佐藤輝明の拙守だった。

 4回裏は先頭のボテボテゴロを一塁へ中途半端な低投(悪送球)。後の失点につながった。8回裏は1死一、二塁からの緩い三ゴロを今度は右翼寄りに一塁悪送球。これも失点につながった。

 1回裏1死一、三塁での三塁線ゴロもはじいて(記録は内野安打)、失点を呼んでいる。

 「初回のも入れたら実質3個」とヘッドコーチ・平田勝男も渋い顔になった。はじいたのも悪送球も捕球体勢が悪いからだとみている。

 久しぶりの横浜スタジアム。「人工芝とアンツーカーの切れ目もあってね。それは慣れていかないとどうしようもない」

 ミスした打球はすべて右打者(トレイ・アンバギー、大田泰示、桑原将志)が引っ張ったゴロだった。平田はゴルフにたとえて「ドローのボール」と言った。「あんなドローの打球はなかなかノックでは出せないからね。やっぱり実戦でたくさん打球を受けていかないとあかんわね」

 練習でノッカーを務める内野守備走塁コーチの馬場敏史、藤本敦士は工夫して、いろんな打球を打っているが、それでも試合で打者が変化球に体勢を崩して打ったようなゴロは打てない。

 大リーグ歴代2位の監督通算2902勝、名将と呼ばれたトニー・ラルーサは「一日にノックを千本受けるよりも、実戦のつもりで、打撃練習の打球を十分間追いかける方が効果が高い」と語る。ジョージ・F・ウィルの『野球術』(文春文庫)で「生きた打球」で練習する重要性を説いていた。物騒な物言いだが、日本で野球人がよく使う「実弾」訓練である。もちろん実戦での打球が最高の練習だろう。

 佐藤輝は「練習するしかありません」と神妙だった。掛布雅之が若手のころ、コーチ、監督だった安藤統男から「試合終了までグラウンドにいるのが一流」と守備の重要性を諭された。守備練習で足腰が鍛えられ、打撃にも好影響があった。守れれば打てるのである。

 「まだ横着な守備をするからな」と監督・岡田彰布は顔は笑っていた。佐藤輝と大山悠輔には守備固めを使わず、試合終了まで出場させる考えでいる。往年のON(王貞治、長嶋茂雄)のようにオープン戦でもフル出場が目立つ。スター育成の道である。=敬称略=(編集委員)

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2023年3月15日のニュース