オリックス・藤田通訳、助っ人野手にも選手の家族にも寄り添い続けた40年

[ 2022年11月15日 07:30 ]

サインプレーの練習でクリス・マレーロ外野手(左)に対し細やかな指示を伝える藤田義隆チーフ通訳(2018年撮影)
Photo By スポニチ

 「こちらこそ、ありがとうございました! 残念なことにコロナで、お会いできる機会が随分と、少なくなってしまいましたよね」

 オリックスが26年ぶりの日本一を達成した翌日のこと。“本当にお世話になりました”とLINE(ライン)を送ると、こう返事が来た。今季限りでチームを離れた、通訳の藤田義隆さん(65)だ。

 約40年に渡って、グラウンド内外で助っ人野手に寄り添い、架け橋を担ってきた。練習中はもちろん、ミーティング、相手投手の映像チェック、移動便や遠征先に同伴するなど、家族以上に濃密な時間を過ごしてきた。

 中学時代に愛聴したビートルズがきっかけで英語習得を決意。82年に神戸・聖ミカエル国際学校を卒業し83年に同校OBの紹介で近鉄入り。通算464本塁打のタフィ・ローズや、同357発のアレックス・カブレラ、アダム・ジョーンズらを担当してきた。

 コロナ禍以前まで、春季キャンプ中の宮崎で、地鶏と地酒をともに堪能するのが恒例だった。カウンター席に横並びで2人で飲んだこともあれば、大人数で飲んだこともあった。お酒は好きだけど、そこまで強くないのか、すぐ顔を赤くしちゃう藤田さん。だじゃれを織り交ぜた軽妙な藤田さんのトークをアテにお酒を楽しむのは、なんとも贅沢で、心地良い時間だった。どんなに酔っても、20歳以上も年下の僕なんかにも、絶対に敬語で接する紳士な姿勢に尊敬したし、魅力的だった。

 藤田さんの誠実さを表す印象深い言葉として、ずっと覚えていることがある。「彼らや、彼らの家族とずっと一緒にいる中で、彼らが活躍して、お立ち台に上がる時は本当にうれしいですけど、降格とか戦力外とか、そういったマイナスの出来事を伝えるのは、やっぱりしんどいです」。連れ添った100人を超える外国陣野手から「フジ」の愛称で親しまれ続けたのは、その人間力からだった。

 吉田正尚からもらったという磁気ネックレスを、大事そうに身につけていた藤田さん。どうぞ、お体に気をつけて。本当に、おつかれさまでした。(記者コラム・湯澤 涼)

続きを表示

2022年11月15日のニュース