【内田雅也の追球】岡田監督の持論「ファーストは右」 右利きの利点に見る野球観

[ 2022年11月12日 08:00 ]

<阪神安芸キャンプ>ケースノックであっ守備練習する大山(撮影・岸 良祐)
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 2死二塁。二遊間のゴロだ。二塁手・熊谷敬宥、さらに遊撃手・小幡竜平もわずかに届かず、中前に抜けた。中堅手・豊田寛が前進して処理、バックホーム――。

 11日の阪神秋季キャンプ。「ケースノック」での1シーンだ。状況を設定して、コーチがノックを打つ。実戦形式の守備、そして走塁練習だ。

 この2死二塁、中前打の時、一塁手・大山悠輔は忙しい。ゴロが遊撃手(または二塁手)が捕球できれば、もちろん一塁に着いて送球を受ける。抜ければ、投手付近でカットマンになる。

 明らかに中前に抜ける当たりならば、すぐカットに向かえるが、冒頭に書いたように二遊間が追いつくかどうかギリギリの場合は忙しくなる。

 ヘッドコーチ・平田勝男が「どうや。あのギリギリの当たりでも(カットに)入れるか?」と尋ねた。大山は「はい。入れます」と返した。実際、動きは俊敏で難なくこなしていた。一塁手・大山は守備の名手である。

 「あの時、自分で判断するんやぞ」と監督・岡田彰布から声が飛んだ。「見えるやろ。自分で判断すればええんよ」

 カットの位置に入った大山がカットするか否かを自分で判断しろ、という指示である。カットに走る最中、そして送球が向かってくる最中に、二塁走者が三塁を回るタイミングが見える。

 特に右投げの場合、半身になった時も正面が三塁を向いているため、走者を見ながらギリギリの判断ができる。歓声で聞き取りづらい捕手の声を頼りにする必要もない。

 本塁で刺せるか、カットするか否か、カットしての本塁送球か、打者走者の二進を刺しにかかるか……といった判断を一塁手自ら行えばいい、と岡田は言っているのだ。

 「ファーストは右」は岡田の持論だ。北陽(現関大北陽)時代の監督、松岡英孝から「左投げ一塁手で甲子園を逃した」と聞かされていた。1965(昭和40)年夏の大阪大会、1死二塁で三塁前セーフティーバント。二塁走者が三塁を蹴って本塁突入。送球を受けた一塁手の転送が間に合わず決勝点を失った。左投げのため捕球体勢から反転する必要があった。

 左投げならゴロ捕球から二塁送球が順回転といった利点もある。ただ、岡田は得失点に直結する本塁送球に有利な右投げ一塁手を望んでいるのだろう。 =敬称略=
 (編集委員)

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2022年11月12日のニュース