【スポニチスカウト部(32)】八戸学院大・松山晋也 「東北の隠し玉」は最速154キロ大型右腕

[ 2022年9月27日 06:30 ]

最速154キロを武器にプロ入りを目指す八戸学院大・松山晋也
Photo By スポニチ

 今秋のドラフト候補となる選手にスポットを当てる「スポニチスカウト部」。アマチュア担当記者の独自目線による能力分析とともに、選手たちの素顔を紹介する。第32回は北東北大学リーグに所属する八戸学院大の最速154キロ右腕・松山晋也投手(4年)。「東北の隠し玉」が、大学最終シーズンでドラフト戦線に浮上した。

 心地よい秋風が吹き、晴天だった9月18日。松山にとってはプロ入りを懸けた決戦の日だった。岩手県西部にある人口約1万5000人の雫石町は、温泉やスキー場がある自然豊かな町。観光で訪れた人々と異なり「有終の美で飾れるように勝とう」と燃えていた。

 雫石町営野球場で行われた秋季リーグ最終戦。先発マウンドに立った1メートル88、92キロの大型右腕は、上から投げ下ろすたびに「ヨシッ!」と叫ぶ気迫の投球で4回を1安打無失点。150キロを2度計測した直球に130キロ台後半のスプリット、カットボールを織り交ぜ6奪三振の快投を見せた。

 それでも「上の世界でやるためには足りない部分が多い」と表情を緩めない。2球団のスカウトが視察し、巨人・円谷英俊スカウトは「制球がまとまってスピードも備えている。パワー系の中継ぎタイプです」と評した。

 4年春までは制球に課題を抱え、公式戦登板の乏しかった未完の大器。同校OBで18年のドラフト1位で巨人入りした左腕・高橋優貴、20年のドラフトで広島に3位指名された右腕・大道温貴らを育てた正村公弘(やすひろ)監督から、3年秋に与えられた「下半身を使うこと」、「投げ込みを増やすこと」の課題に取り組み、最終シーズンに覚醒した。

 特に「投げ込みを増やすこと」は、2学年先輩の大道からも勧められていた。入学時は肩、肘の故障を防ぐために「投げ込み」に積極的ではなかった松山。指揮官と憧れの先輩からの助言により「暇があれば投げるくらいの勢いで投げる量を増やした」と連日のブルペン入り。投げて覚えることで制球と球威の再現性は高まった。

 ドラフト戦線でのラストスパートに成功した「東北の隠し玉」。「学生野球は終わったんですけど次のステップで野球をやりたい。足りない部分が多いので切り替えて肉体改造から始めようと思っています」。ドラフト会議は10月20日。成長のアクセルは緩めない。(柳内 遼平)

 《元広島・黒田が憧れ》プロ入り後の青写真は明確だ。憧れの投手は、ヤンキースや広島などで活躍した同じ右腕の黒田博樹。投球スタイルだけではなく「熱いものがあって筋を通すことに対して心が動かされるものがある」と生きざまにもほれ込んでいる。黒田の動画を何度も視聴し「若い時は真っすぐで押せないといけない」の金言を心に刻み、直球を磨き抜いた大学の4年間。年を重ねてもカットボールや、ツーシームを駆使した投球術で活躍を続けた姿から「力で押せて、技術でも打ち取れる。どっちも兼ね備えたピッチャーになりたい」と目を輝かせた。

☆球歴 天間西小2年から天間西ジャイアンツで野球を始める。天間舘中では軟式野球部に所属。八戸学院野辺地西では甲子園出場なし。
 ☆身体能力 50メートル6秒1。遠投123メートル。
 ☆球種 直球、スライダー、カットボール、カーブ、スプリット。
 ☆最大の武器 「気迫のこもった火の玉ストレートです」
 ☆急成長 高校時代の最速は140キロ。大学で一気に14キロアップしてプロ注目投手に。
 ☆投げ込みに対する考え 「投げ込みや走り込みがいらないと言われている時代の中でもトライすることは大事。やってダメならば練習メニューから外せばいい」

続きを表示

2022年9月27日のニュース