阪神・糸井 大粒の涙 有終1755本目の安打「甲子園で最後の打席を迎えられて、心の底からよかった」

[ 2022年9月22日 05:15 ]

セ・リーグ   阪神4―10広島 ( 2022年9月21日    甲子園 )

<神・広>胴上げされる糸井(撮影・奥 調)
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 阪神・糸井嘉男外野手(41)は21日の広島戦(甲子園)で現役最後の試合に臨んだ。2―4の5回先頭で西純の代打で登場し、左前打を放った。通算1755安打目の安打を記録して“有終の美”を飾った。試合後には引退セレモニーが開かれ、ファンに別れを告げた。

 涙をこらえながらラスト舞台に向かい、プロ19年間の集大成を見せつけた。糸井は最後まで超人だった。2―4の5回先頭で代打で登場。フルカウントからの8球目を左前に運んだ。割れんばかりの拍手にヘルメットを脱いで応え、ベンチに戻ると、我慢していた涙があふれ出た。

 「いつもは打席に集中していますが、今日は周りのすべてを感じたいなと思っていた。最後となると、やっぱり寂しいですけど、ヒットを打てて、本当に幸せでした」

 8月2日の巨人戦以来、50日ぶりとなる1軍出場となったが、先発・森下の147キロ直球に力で勝った。6月19日のDeNA戦以来の安打は通算1755本目となり自ら最後の舞台に花を添えた。

 「(ファンの歓声は)僕もうれしかったし、甲子園で最後の打席を迎えられて、心の底からよかった」

 日本ハム時代の06年に投手から外野手に転向した当初、打撃練習では大村2軍打撃コーチ(現DeNA2軍打撃コーチ)から最初に教えられたのが、逆方向への打ち方だった。内角高めの直球や外角低めのチェンジアップに対して、ポイントを近くして逆方向に打ち返す練習を繰り返した。「一番大きなテーマでやっていた」。最後の最後は原点回帰の打撃を披露した。

 家族にも勇姿を届けた。この日は京都府与謝野町の実家から両親と弟も球場に駆けつけた。実は8月下旬には両親を一度、試合に招待していた。本来は1軍の試合を観戦する予定だった。しかし、8月10日に新型コロナウイルスに感染した影響で、急きょ2軍戦に変更。それでも炎天下の屋外球場で、最後まで見守ってくれていた。常に支えてくれた家族に、最高の形で恩返しを果たし、セレモニーでは改めて感謝の言葉を伝えた。

 野球をずっと愛してきた。かねて「うまくなりたいという向上心はずっとある」と話していたが、努力は表で見せなかった。遠征先では打撃投手に早出練習に付き合ってもらい、他の選手が球場入りする1、2時間前から室内練習場やブルペンを利用して打撃練習を敢行。甲子園での全体練習終了後も、他の選手が食事をする中、一人、室内練習場で汗を流した。

 積み重ねてきた努力の結晶はこの夜の一打で完結。糸井は最後まで走りきった。(長谷川 凡記)

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