【内田雅也の追球】思い返したいキャッチボールの心 輝&大山の失策は勝ったからこそ、より反省できる

[ 2022年8月3日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神6ー3巨人 ( 2022年8月2日    東京D )

<巨・神>4回、三走・重信を挟むも落球する失策で得点を許す佐藤輝(右)(撮影・白鳥 佳樹)
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 阪神7回表の勝ち越し点は代走で出た熊谷敬宥の足でもぎ取った。

 先頭・糸原健斗が安打した無死一塁で代走。アデルリン・ロドリゲスの二ゴロを巨人・吉川尚輝が弾き、二塁送球したが、熊谷の足が一瞬早くセーフ。記録は吉川の失策だが、俊足走者でなければ二塁封殺だったろう。

 送りバントの1死二、三塁。代打・北條史也の浅めのライナー性中飛でも素早く帰塁し、余裕で生還できた。本塁へのヘッドスライディングもスピードは落ちなかった。

 熊谷は9回表無死一塁の打席ではバスターで三塁頭上をゴロで抜く左前打を放ち、ダメ押し点に貢献している。

 試合終盤に出ていった控え選手が働いての勝利は味わい深い。青柳晃洋に白星、岩崎優にセーブがついて、夏の長期ロード初戦をうまく滑り出すことができた。

 勝ったからこそ、より反省もできるものだ。お粗末だった4回裏の挟撃プレーである。

 この回1点を失ってなお無死一、三塁で一塁走者・丸佳浩がスタート。一、二塁間で挟撃し、さらに三本間で挟撃となった。この最中、佐藤輝明が落球(失策)、拾い上げた大山悠輔が本塁悪送球(失策)して2人の走者がともに本塁に還ったのだ。“2ラン”のダブル失策で一気に逆転を許したのである。

 プロに向けて書くのも気がひけるが、結局はキャッチボールの問題ではないだろうか。

 古い話だが、昭和40年代、野球記者・好村三郎が<好選手になるにはどうしても、キャッチボールを真剣にやる気持ちが第一である>と書くと、当時巨人監督だった川上哲治から「好村さん、よいものを書いてくれました。あれを切り取ってスクラップに貼りました」と礼を言われたそうだ。著書『考える野球』(朝日新聞社)にある。

 川上も著書『ベースボールのすべて』(文藝春秋)で<いま振り返ってみると、キャッチボールがV9のチームプレーを支えた、という思いが強い>と記した。<技術面での基本であるばかりでなく、チームプレーの精神を学ぶ。相手の捕りやすいところに投げてやる、これはチームプレーの第一歩なのだから>。
 チーム一丸や相手を思う……などは阪神が目指してきた姿勢である。キャッチボールの心を思い返したい。 =敬称略=(編集委員)

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2022年8月3日のニュース