アパレル業界でも全力投球の元猛虎戦士「野球だけじゃない一面を」オリジナルブランド立ち上げ

[ 2022年8月2日 07:00 ]

猛虎の血―タテジマ戦士のその後―(17)横山雄哉氏

自身のブランド「GAUCHER」の商品をアピールする横山雄哉(撮影・岸 良祐)

 14年のドラフト1位で入団し、20年に現役引退した元阪神の横山雄哉氏(28)は、野球界からアパレル業界に飛び込んでセカンドキャリアをスタートさせている。「街に野球の楽しみを」を合言葉に、オリジナルブランド「GAUCHER(ゴーシェ)」を立ち上げ、群雄割拠の業界に挑もうとしている。 横山雄哉氏の動画前編「スポニチチャンネル」はこちら

 ダイナミックなフォームを武器にマウンドで躍動していた“ドラ1左腕”が、少し背中を丸めて黙々とミシンを打つ。グラブから相棒は変わった。「野球を仕事にしない自分は違和感があったんですけど、野球だけじゃない一面を見せたい思いもある。今は社会人として、一から頑張っていきたい気持ち」

 横山氏は今年1月から株式会社「SIR」に入社し、アパレル業界に飛び込んだ。名刺には「オリジナル衣類作成・販売」「プリント・刺繍(しゅう)加工業」の文字が並んでいる。衣類の袋詰め、ブランドからの依頼を受けて生地を集めるピッキング、商品に針などの異物が混入していないかの検品…と業務は幅広い。時には企業へ営業に出向くことも。「元々、人としゃべるのは嫌いではないので。制服、作業着、ポロシャツ、あとはオリジナルのTシャツだったり。会社さんにお邪魔して作ってもらう営業をしていますね」とその目は輝く。選手時代から「おしゃれ」には人一倍こだわってきた。「根本は服が好きで。野球を辞めた時に何が自分に向いてるかを考えて、好きなことをまずやってみたいなと。アパレルの世界に飛び込もうと決意しました」

 新日鉄住金鹿島(現日本製鉄鹿島)から14年ドラフト1位でタイガースに入団。即戦力左腕として期待され、2年目にはプロ初勝利をマークしたものの、キャリアの大半は故障との闘いに費やした。18年には左肩を手術し育成選手に降格。「しんどかったですし、ずっとつけていた背番号15を失ったのは悲しかった」と、どん底を味わった。それでも前を向けたのは家族の存在があったから。2年目のオフに8歳上の女性と結婚し、子供も授かった。「早い段階で結婚しましたし、ルーキーの時は独身で自分だけ良ければ…という感じだったんですけど、子供ができて支えないといけない立場になった。そこは責任を持って野球に打ち込んだつもり」。20年9月には支配下登録に返り咲き、10月4日巨人戦では1260日ぶりの1軍登板を果たした。その時の声援は、プロ野球選手としての宝物になっているという。「リリーフカーに乗ってグラウンドに出た時の、あの瞬間はリハビリ頑張って良かったなと。ファンの方の声援が凄かったので鳥肌が立ちましたし、結果は出なかったですけど忘れられない瞬間でしたね」。戦力外通告を受けたのは、それから2カ月もたたないうちだった。「受け入れられない感じはありましたが、日を追うごとに冷静になって。そこまでの一日一日に悔いはなくて。周りからは“絶対にやった方がいい”と言われましたけど、僕の中では、この肩を休ませてあげたいなと」

 今年5月には、タイガース時代の先輩でもある山本翔也氏とともにオリジナルブランド「GAUCHER(ゴーシェ)」を立ち上げた。ともに左腕。フランス語で「左利き」という意味があり「街に野球という楽しみを」というコンセプトを掲げてヘビーウエートのTシャツなど、こだわりが詰まった商品を数々展開している。アパレル業界はあまたのブランドが生まれては、消えていく完全な“レッドオーシャン”。競争という意味では野球界と似た部分もある。

 「(アパレル業界が)厳しいというのは仕事をしていても感じています。1回売れただけではダメだと思うので、お客さまに飽きがこないようにブランド関係者の方といろいろ会議していますし、難しいですけど、解決していきたい。まずはゴーシェをしっかりとしたブランドにする。いろんな方に“かっこいい”“かわいい”を届けたいですね」

 ファッション業界という“マウンド”で、第二の人生を歩んでいく。 (遠藤 礼) 

 ◇横山 雄哉(よこやま・ゆうや)1994年(平6)2月21日生まれ、山形県出身の28歳。山形中央では2年時に春夏連続で甲子園出場。新日鉄住金鹿島では14年都市対抗に全足利クラブの補強で出場。同年秋に侍ジャパン21U代表で21Uワールドカップ(台湾)準優勝に貢献。14年ドラフト1位で阪神入団。18年8月に左肩手術を受け育成選手に。20年9月30日、支配下選手に復帰したがオフに自由契約。通算成績は9試合3勝2敗、防御率4.67。21年は「タイガースアカデミー ベースボールスクール」でコーチを務めた。1メートル83、84キロ(現役当時)。左投げ左打ち。

 ○…横山氏が立ち上げたベースボールストリートブランド「GAUCHER」は、オンラインショップで購入が可能だ。Tシャツ、ナイロンパンツなどを展開しており、すでに完売しているものも多い。ブランド公式インスタグラムで在庫や新作の情報を日々、発信している。すでに秋冬モデルにも着手しており、横山氏は「近々出ると思うので、楽しみにしていてほしい」と自信を込めた。
 【オンラインショップ】www.gaucher-onlineshop.com
 【インスタグラム】gaucher_official

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