【内田雅也の追球】貧打の阪神打線 まだ春先、でも打の基本「センター返し」を忘れずに… 

[ 2022年3月6日 08:00 ]

オープン戦   阪神2-8楽天 ( 2022年3月5日    甲子園 )

 初回、銀次が中前適時打(投手・藤浪)
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 4回5失点だった阪神先発、藤浪晋太郎が浴びた7本の安打のうち6本はセンターが処理していた。残る1本も二塁頭上を破る右中間安打(処理はライト)だった。

 凡打のなかにも二ゴロが3本ある。打者のべ23人で、三振、四球の7人を除く打球16本のうち、9本がセンター方向に飛んでいた。見事な「センター返し」で楽天各打者の姿勢が見えるようだ。

 阪神はどうか。岸孝之に対し、同じ4回までの打球でセンターが処理したのは近本光司の中飛だけ。打球11本のうち、二遊間処理を合わせ、センター方向は4本だった。

 対照的と言える。少なくとも2試合連続5安打と、貧打の阪神打線を考える材料になる。

 たとえば、藤浪の立ち上がり。安打は中前の単打3本。自らのバント処理ミス、一塁手の野選、押し出し四球など自滅と不運が重なった。

 だが、内角速球で詰まらせながら中前に落とされた銀次の適時打は、不運なようでも、打者のセンター返しの姿勢が勝っていたのではないか。

 岸から唯一の快打と言える近本のライナー性中飛もセンター返しの姿勢が生んだのではないか。

 反対にオープン戦4試合無安打の大山悠輔は外角球を引っかけての遊ゴロ(失策)と外角球を見逃しての三振。素人目には体が開き、引っ張りの意識が強すぎるように見える。そんなことは先刻承知で、わずかなタイミングのズレを修正している最中なのだろう。

 3冠王3度の落合博満は著書『落合博満の超野球学』(ベースボール・マガジン社)で<まえがきにかえて>として<なぜセンター返しが基本なのか>を論じている。ノッカーが打つ方向を定める際を例に<両肩を結ぶ線と平行に打ち返すことが最も自然で理にかなった打ち方なのだ>。

 右への本塁打も多かったが<センター返ししか狙っていなかった>。左右に飛ぶのは結果としてポイントがずれただけで<センター返しを意識していればレフトにもライトにもヒットが出る>。

 8回裏の2点はセンター返しの姿勢が見えた3安打が生んだ。端緒の小幡竜平の遊撃内野安打は内角球に詰まっても打ち返した。島田海吏の右前打は追い込まれ、緩い変化球に対応した結果だ。近本は第1ストライクを見事に中前に返した。
 打線は水物で相手投手の出来もある。まだまだ寒い春先だ。ただ、立ち返る基本や原点は忘れずにいたい。 =敬称略=
 (編集委員)

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2022年3月6日のニュース