殿堂入り高津氏と古田氏の友情  知られざる10年前の“裏引退試合”

[ 2022年1月15日 07:00 ]

野球殿堂入り発表

12年12月に行われた「裏引退試合」で現役にけじめをつける1球を古田氏(手前)に投じた高津氏
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 野球殿堂入りを果たしたヤクルト・高津臣吾監督の引退試合は2012年9月22日、新潟県長岡市の悠久山球場で行われた。当時43歳で、BCリーグ・新潟の選手兼監督。セレモニーには古田敦也氏も駆けつけた。その3カ月後、観客のいない神宮球場でもう一つの「引退試合」が開催されたことは知られていない。

 NPBではヤクルト一筋で、歴代2位の通算286セーブをマークしたが、07年のシーズン終了後に突然、戦力外通告を受けた。現役続行にこだわった高津氏はその後、韓国、米マイナー、台湾でプレーを続け、11年からは独立リーグの新潟に在籍した。新潟の地で22年間の現役生活に幕を下ろしたが、「もう一度、神宮のマウンドに立たせてあげたい」と仲間たちが企画したのだ。

 中心となったのは、石井一久現楽天監督と、高津氏と同じ90年ドラフト入団(2位)で、引退後は同氏がマネジメント契約を結ぶ吉本興業で長年サポートしている小坂勝仁氏の元ヤクルト同僚。12月9日、「裏引退試合」と称し、神宮を借り切っての草野球の試合が組まれた。斎藤隆現DeNA投手コーチ、当時メジャーでプレーしていた青木宣親、福留孝介、田沢純一らも集まった。

 草野球終了後、高津氏は背番号27のヤクルトのユニホームを着た古田氏のミットに現役にけじめをつける一球を投げ込んだ。数々の記録を刻んできた神宮のマウンドに立つのは5年ぶりだった。夜の打ち上げでは「最後は神宮で古田さんに投げたいという思いはあった」とあいさつした。

 あれから9年がたった昨年、監督として巨人とのCSファイナルステージでは、神宮のヤクルトファンの前で日本シリーズ進出を決めて宙を舞った。そして日本一に導いた。「あの時にもらった寄せ書きは今でも一番目立つところに飾ってあるよ」と高津氏。古田氏は昨年に続き、今年も臨時コーチとしてキャンプに参加する。バッテリーを超えた2人の友情は今後も続いていく。(甘利 陽一)

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