大野豊氏 ヤクルト・石川の幻惑術 130キロ台が速く見える…パ・リーグにいない左の技巧派

[ 2021年11月25日 05:30 ]

SMBC日本シリーズ2021第4戦   ヤクルト2-1オリックス ( 2021年11月24日    東京D )

<ヤ・オ>6回1失点と好投したヤクルト・石川(撮影・村上 大輔)
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 【大野豊氏 シリーズ大分析1】見事に術中にはめてみせた。ヤクルトが日本一へ王手をかけた日本シリーズ第4戦。スポニチ本紙評論家の大野豊氏(66)は、6回1失点で勝ち投手となった41歳の先発・石川がオリックス打線を巧みに自分のペースに引き込んだのが勝因と指摘。継投策も明暗を分け、崖っ縁のオリックスは打線の奮起が流れを変える鍵と分析した。

 直球は130キロ台とスピードはない。それでもボールを自在に操り、全ての球種をストライクゾーンだけでなく、ボールゾーンも巧みに使って投げる。石川は持ち味の投球術でオリックス打線に全く的を絞らせなかった。

 捕手の中村との息もぴったりで、どのボールもリード通りにコントロール。初回1死から2番・宗に左前打されたが、3番・吉田正を直球、スライダーで追い込み、低めの121キロのシンカーで空振り三振。続く杉本も123キロのシンカーで中飛に仕留めた。2回は先頭のT―岡田に四球を与えたが、安達を内角カットボールで遊ゴロ併殺。3、4、5回は3者凡退と自分のペースに引き込んだ。

 ベース盤の上でうまく散らし、内外角のコースを突き、低めのゾーンも使う。直球も内角へしっかり投げ込むから、オリックスの各打者は130キロ台でもかなり速く感じたはずだ。特に吉田正、杉本の3、4番に対して計5打席で三振1つ、残る4つのアウトが飛球(ライナーを含む)だった。自分のスイングができなかったか、いい当たりをしてもタイミングをずらされていた証拠で、石川の術中にはまっていた。

 パ・リーグにこういうタイプの投手はいない。球速はそれほどなく、コントロールがいいから、初めて対戦する打者は「いつでも打てる」という錯覚に陥ってしまう。この日のオリックスがまさにそれで、6回2死から連打で一時同点としたが、それもエラー絡みの得点。内容は完全に抑え込まれていた。

 レギュラーシーズンの後半に調子を落としていた石川だが、いい準備をしてシリーズに入った。全てのボールで攻めた6回77球。しっかり自分のボールを投げ切れた。41歳、見事な投球だった。

 ≪得意のシンカー光った≫石川はシンカーが光った投球だった。シンカーは利き腕の方向に曲がりながら落ちる変化球で、左腕はプロ入り時から得意にしてきた。プロ20年目の今季も磨きがかかり、空振り率(250球以上が対象)はレギュラーシーズンで両リーグトップの22%を誇り、ストライク率も68.3%と3番目に高かった。

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