元NPB審判員記者がブルペンでジャッジ! 西武2位佐藤の“ステルス変化球”が凄い

[ 2021年10月21日 10:57 ]

筑波大・佐藤隼輔投手
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 西武からドラフト2位指名を受けた筑波大・佐藤隼輔投手(4年)が20日、茨城県つくば市の同校で指名あいさつを受け「新人王を目指して開幕からプレーできるようにアピールしたい」と決意表明した。

 国立大出身で新人王を獲得すれば、大分経専(現・大分大経済学部)出身で173勝を挙げた元毎日の左腕・荒巻淳が1950年にパ・リーグ初代新人王に輝いて以来、史上2人目となる。

 記者は11年から16年までNPB審判員を務めた。2軍戦のウエスタンリーグではソフトバンク・千賀や阪神・岩崎ら今では球界を代表する投手の投球をジャッジ。試合以上にボールを見る機会があるシーズン中の練習や春季キャンプでは日本ハム時代の大谷や西武時代の菊池の投球判定も行った。アマ野球担当記者となった今でも、かつて目に焼き付けた球筋を選手評価の判断材料にしている。

 春季リーグ期間だった5月13日。筑波大・川村卓監督の許可を得て、佐藤のブルペン投球を打席と捕手の後ろから見せてもらった。スタンドからではわからなかった変化球の特性に気づくことができた。

 プロ野球で球審を経験したことで好投手に共通する条件を見つけた。それは直球の球道に近い変化球を持っているという点だ。1年目のソフトバンクキャンプで見た和田、杉内が投じるベースの手前で鋭く変化するスライダーに「これがプロか」と衝撃を受けた。佐藤の投じるスライダーとチェンジアップも同じだった。

 「ストレートだ!」と判断できるポイントまでボールが来てから急激に変化する。曲がり幅は大きくないが、打者に変化球であることを悟られない「ステルス(捕捉不能の)変化球」だ。佐藤が投じる直球の平均球速は140キロ台中盤で変化球も2種類だけ。なぜ打者を抑えられるか、答えは直球と見分けがつかない変化球にあった。

 川村監督は佐藤を「投手に必要なコントロール、球速、変化球が揃っている。それが完成品かと言われたらそうではない」と評する。記者もこれに同意だ。これからプロの世界で先発として大成するにはツーシームやカーブを習得して投球の幅を広げることを求められるかもしれない。スタミナをつけて平均球速を上げることが必要かもしれない。

 ただ、現状でもプロの打者を苦しめる武器を佐藤は持っている。(柳内 遼平)

 ◇佐藤 隼輔(さとう・しゅんすけ) 2000年(平12)1月3日生まれ、宮城県出身の21歳。小4から野球を始める。広瀬中を経て、仙台高では1年夏からベンチ入りも甲子園出場は果たせず。筑波大でも1年春からベンチ入り。19年に大学日本代表に選ばれた。首都大学リーグ通算28試合で10勝4敗、防御率1・46。1メートル81、82キロ。左投げ左打ち。

 ◇川村 卓(かわむら・たかし)1970年(昭45)5月13日生まれ、北海道出身の51歳。札幌開成では主将で3年夏に甲子園出場。筑波大でも主将を務めた。卒業後は浜頓別高で監督を務め、00年から母校・筑波大野球部の監督に就任。大学では体育会系の准教授でコーチング学や野球方法論を専門分野とする。

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2021年10月21日のニュース