秋山が反骨心見せたこの日の1勝が、5日の巨人戦を「勝ちに等しい引き分け」だったと思わせてくれる

[ 2021年9月12日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神4-1広島 ( 2021年9月11日    マツダ )

<広・神>最後を締めたスアレスを迎える秋山(撮影・大森 寛明)
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 【畑野理之 理論】 秋山拓巳が7回2死まで無安打投球。大記録こそあと7アウトで途切れたが、7回1失点で10勝目を挙げたのを見て、6日前に突きつけられていた課題の答えが出たと思った。

 そのゲームを振り返る。首位攻防の第3ラウンドだった5日の巨人戦で秋山は初回に3失点して、2回の打席で代打を送られた。5回終了時は0―6だったが、6回に4得点、7回にも2得点で追いついた。代打策が的中し、2回で先発投手を交代させて反撃態勢を取った矢野燿大監督の積極采配が奏功した…とその日のコラムで書いた。

 逆にクリストファー・メルセデスを5回無失点で交代させ、中心選手の坂本勇人も6回裏からベンチに下げて、代わった2人の遊撃手がいずれも失策するなど原辰徳監督は「私の用兵のミス」と反省。先をにらんだ采配は結果的にスキを生んだ…とも付け加えた。

 しかし6―6の9回裏の攻撃で1死一、三塁から無得点に終わったことには触れず、奥歯に物が挟まったような感覚だった。梅野隆太郎が浅い右飛、最後も近本光司が中飛で同点でゲームセット。スクイズだったらどういう結果だっただろう。サヨナラ勝ちまでできたのでは…とも、正直、少し思った。6点差を追いついたのだから当然、勝ちに等しい引き分けだった。いや、初戦に逆転勝ち、2戦目も逆転サヨナラ勝ちと勢いがあったので、3タテを食らわすことができたし、もったいない引き分けだったのかもしれない。その日は答えが出るわけがない。吉と出るか凶と出るかは、その後次第だと言い聞かせてきたからだ。

 果たして…。

 秋山もメルセデスも同じく中5日でこの日に先発したが、勝利投手と敗戦投手に分かれた。チームも阪神は7日以降は3勝2敗。巨人は4敗1分けで、今季最多の連敗は6まで伸びている。3位に後退し、首位まで4ゲーム差に開いた。

 03年の阪神優勝を振り返る上で欠かせない一戦が、7―1の9回に追いつかれた4月11日の巨人戦(結果は12回8―8引き分け)だ。吉野誠が仁志敏久を2ストライクと追い込み「あと1球」のタイミングで藤川球児にスイッチし、中前適時打→代打・後藤孝志に同点3ラン…。帰宿後に星野監督は選手に「俺のせいで勝てなかった」と頭を下げたのは有名だ。翌12日に9―2と大勝して首位に立ち、「あの勝ちで選手たちの強さと、今年のチームはイケると確信した」と後述している。

 1カ月後、矢野監督も勝ちに等しい引き分けを分岐点に挙げ、秋山が反骨心を見せたこの日の1勝が大きかったと振り返っているかもしれない。=敬称略=(専門委員)

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