開幕25日前の電撃トレードに隠された巨人・原監督の思惑 田口放出しヤクルト・広岡獲得

[ 2021年3月2日 05:30 ]

原監督
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 巨人・田口麗斗投手(25)とヤクルト・広岡大志内野手(23)の交換トレードが1日、両球団から発表された。田口は先発も救援もこなせる実績十分の左腕で、広岡は長打力に定評がある内野手。巨人の開幕直前のトレードは日本ハムと行った06年以来15年ぶりだが、サインプレーなどを確認したキャンプ後に同一リーグで行うのは超異例。その背景にスポニチ本紙の巨人担当記者が迫った。

 開幕直前の異例のトレードには3つの背景が見える。まずは「ポスト坂本」の育成。広岡は今季に限れば控えが手薄な内野手の一員だが、球界関係者が「未完の大器」と話すように、潜在能力が高い遊撃手を大きく育てたい意向がある。

 原監督が編成権を担う「全権監督」として第3次政権をスタートさせたのは18年10月。直後に開催されたドラフト会議で大阪桐蔭・根尾(現中日)を1位指名した。当時29歳だった坂本の後継育成を見据えた指名。守備の負担を減らすため、坂本の将来的な三塁コンバートも視野にあった。だが4球団競合で根尾獲得ならず。2年以上が経過したが次代の遊撃手の輪郭は見えていない。広岡は15年ドラフト2位でヤクルトに入団。19年に10本塁打したパワーが魅力で外野も守れる。新背番号「32」と同程度の本塁打を打てる能力を秘め、球団も期待する。

 2つ目は原監督が提言する「移籍期限の撤廃」。キャンプでサインプレーなど戦術を落とし込んだ直後だが、小さな枠にとらわれず広い視野で先を見る。昨季は12球団で最多の5件のトレードを成立。毎年、補強期限があるが「トレードに期間を設けては駄目。一年中でいい」と公言する。2月のキャンプ期間にはメジャーの「招待選手制度」の導入も提言した。ヤクルトとの交換トレードは実に44年ぶり。開幕直前であろうが、同一リーグであろうが関係ない。

 3つ目は「球界の活性化」。球団はいわゆる「飼い殺し」をなくし、原監督も「選手は個人事業主で夢追い人。球団がひもをつけているわけじゃない」と語る。田口は16年から2年連続で2桁勝利も、19年以降は中継ぎを主戦場としてきた。2月3日には右太腿裏の張りで離脱。「職場放棄。眠ってるのは田口くらい」と手厳しかったのは開幕ローテーション入りを期待していたからこそだ。根底にあるのは昨季途中に沢村をロッテにトレードして飛躍させたのと同様の親心。先発の強化が急務である新天地での飛躍を願っている。

 田口は年俸7000万円で、広岡は1600万円。そんな「格差」も関係ない。原監督は「聖域なき改革」を球界に発信し続ける。
(巨人担当キャップ・神田 佑)

 ≪巨人とヤクルトのトレードは長嶋一茂以来≫巨人がヤクルトからトレードで選手を獲得するのは93年の長嶋一茂以来28年ぶり。この時は金銭との交換だった。選手同士となると77年の倉田誠と浅野啓司以来44年ぶり4度目だ。

 ◆田口 麗斗(たぐち・かずと)1995年(平7)9月14日生まれ、広島県出身の25歳。小学3年で野球を始め、広島新庄では1年夏からベンチ入り。3年夏の瀬戸内との広島大会決勝で延長15回引き分けも19三振を奪い「広島のドクターK」と呼ばれた。13年ドラフト3位で巨人入団。19年にはプレミア12の日本代表にも選出。通算36勝37敗2セーブ、防御率3.49。1メートル71、83キロ。左投げ左打ち。

 ◆広岡 大志(ひろおか・たいし)1997年(平9)4月9日生まれ、大阪府出身の23歳。奈良・智弁学園では巨人・岡本和の1年後輩で2年時に春夏連続甲子園出場。3年時は主将。15年ドラフト2位でヤクルト入団。16年9月29日のDeNA戦(横浜)で初出場し初打席初アーチ。1軍通算成績は236試合で打率.214、21本塁打、54打点。1メートル83、81キロ。右投げ右打ち。

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