本格指導前なのに…広島に「河田野球」浸透の気配 犠打のキーマンが明かす難題と重圧

[ 2021年1月16日 09:00 ]

就任会見に臨む広島・河田ヘッドコーチ
Photo By スポニチ

 今季から広島に復帰する河田雄祐ヘッドコーチ(53)は、就任直後の秋季練習でソフトバンク・今宮の映像を選手に見せた。守備でも打撃でもない、犠打の場面だった。動画を見るように呼び寄せたのは、上本崇司(30)、三好匠(27)の両内野手。再会する春季キャンプまでに犠打を磨くように――とのメッセージだった。

 同ヘッドは「すっとサインを出せない選手がいると困る」と報道陣を通じて就任早々に犠打を重宝する方針を発信してきた。そして、観察に徹していた秋季練習中、上本、三好の2人だけには技術指導までした。「芯に当てて球を殺せるようにしておいて」。一見矛盾する難題に、2人は「いままでにはなかった」とオフ期間にも関わらず犠打練習を繰り返している。

 技術向上のヒントは、昨季に史上7人目の通算300犠打を達成した今宮の動画にある。三好は「芯に当たると球は反発してしまうので、そこを体全体、肘を柔らかく使いながら勢いを吸収しないといけない」と見本を目に焼き付けた。バットの先端に球を当てることで打球の勢いを弱めるのが従来の考え方。150キロ超の直球に、多彩な変化球にも対応させるために「芯での犠打」という課題を与えた。

 同ヘッドは、2人に「代打バントでの出場もある」とも伝えている。上本には「犠打ができないなら2軍だから」とまで言った。決して冗談とも言い切れない強烈なメッセージに、上本は「僕は打撃を向上させたいと言ってきたけど、犠打があっての打撃。犠打ができなければ打席はもらえないですから」と覚悟を決めた。一方の三好も「あまり犠打は得意な方ではないけど、そういう場面で使ってもらえるなら試合に出られる」と意気に感じている。

 ただし、「代打バント」の重圧は半端ではない。相手は配球、守備シフトなどを駆使して犠打を阻止しようとし、首脳陣からは成功して当然と送り出される。三好は「普段の犠打と全然違う。心臓バクバク。守備固めより緊張する」と言えば、上本は「メンタルも含めて本当に難しいですから!」と強調する。最高難度の役割を求めたところに、犠打のスペシャリストをベンチに1枚は置きたいという新ヘッドの狙いが見えてくる。

 春季キャンプでは、田中広、菊池涼ら主力選手にも例年以上の犠打練習を課す方針だ。ならば、伏兵たちには、より高いレベルが求められるに違いないとの危機感がある。本格的な指導前から、河田ヘッドの求める攻撃がチーム内に浸透し始めている。(記者コラム・河合 洋介)

続きを表示

2021年1月16日のニュース