菅野 巨人残留の舞台裏…来季海外FAで再トライ

[ 2021年1月9日 05:30 ]

巨人・菅野
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 ポスティングシステムを利用して大リーグ移籍を目指していた巨人の菅野智之投手(31)が残留することが8日、決まった。交渉期限の米東部時間7日午後5時(日本時間8日午前7時)を前に交渉を打ち切り、今季も巨人でプレーすることを伝えた。複数の球団が獲得に乗り出す中、夢をいったん封印し、残留に至った背景には何があったのか。メジャー取材歴25年の奥田秀樹通信員(57)が舞台裏に迫った。 

 菅野は30日間の交渉期間最終日に「巨人残留」の決断を下した。ブルージェイズ、ジャイアンツ、レンジャーズなど複数球団が獲得に動いたが、米球界関係者によると、菅野が最後まで悩んだのは、期限数日前に正式オファーを出したパドレスだったという。

 このオフ、18年のサイ・ヤング賞左腕スネルと、昨季の最多勝ダルビッシュを相次いでトレードで獲得。野手はマチャド、タティスらタレントがそろっており、今季は世界一を狙える戦力が整った。菅野がメジャー移籍の条件としたのは、金銭よりも優勝を狙えるチーム。ブルージェイズは最後まで対抗したが、選手層は決して厚くなく、加えてコロナ下で昨季は本拠地トロントで試合ができなかった不安要素もあった。その点、パドレスは希望に合致しており、ダルビッシュがいるのも大きなアピールポイントだった。

 しかし、時間が足りなかった。パドレスは12月末からスネル、ダルビッシュのトレード交渉、さらに韓国人内野手の金河成(キムハソン)の獲得に時間を費やし、菅野争奪戦への参戦が他球団より遅れた。交渉リミットがあるポスティングシステムの難しさ。代理人側はギリギリまで交渉を続けたが、合意には至らなかった。

 一方、早くから獲得に動いていたMLB球団の条件が思うように上がらなかった背景には、巨人側の残留オファーが報じられたことがある。4年契約で、毎オフにメジャーに再挑戦できるオプトアウトが付く好条件。現在のメジャーは年齢にはシビアで、31歳の菅野に巨人と同等の4年契約を提示するのはリスクがあり、その場合はベースとなる年俸は抑えられる。多くの球団がコロナ下で緊縮財政を強いられ、さらに譲渡金も発生する菅野の契約には二の足を踏み、メッツなどは途中で撤退した。

 菅野は当初から巨人残留の選択肢を残し、MLB球団との交渉に当たったが、夢をいったん思いとどまらせたのは、MLB球団を上回る巨人の熱意だったのではないか。早ければ今季終了後にはFAとなり、もう一度挑戦できる。菅野にとっても、自身の市場価値をはかることができたのは大きいだろう。決して無駄ではない30日間だった。(奥田秀樹通信員)

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2021年1月9日のニュース