ソフトバンク3年ぶりのリーグ優勝 工藤監督「川村君と戦う」 感謝と勇気届けた特別な1年

[ 2020年10月27日 21:18 ]

パ・リーグ   ソフトバンク5ー1ロッテ ( 2020年10月27日    ペイペイD )

<ソ・ロ>リーグ優勝を決め円になって喜ぶソフトバンクナイン(撮影・岡田 丈靖)
Photo By スポニチ

 ソフトバンクは27日、優勝マジック2で迎えた2位・ロッテとの直接対決を制して3年ぶり19度目のリーグ優勝(1リーグ時代を含めると21度目)を決めた。工藤公康監督(57)にとっては3度目の優勝となった。新型コロナウイルスによる混乱、3軍コンディショニング担当だった川村隆史さん(享年55)との悲しい別れも乗り越えた。11月14日開幕のクライマックスシリーズ(CS)を勝ち抜き、4年連続日本一へと向かう。

 ソフトバンクナインの、工藤監督の感情が一気にあふれた。3年連続日本一のチームが昨年、一昨年と手にできなかったリーグ優勝。111試合目でつかみ取った。

 投打がかみ合う完勝だった。先発の和田が6回3安打無失点で流れを渡さない。5回に選手会長の中村晃の中犠飛で先制すると、6回には甲斐が左越え2ランで中押し。8回にも甲斐の左翼線適時二塁打などでダメを押し、強力救援陣がリードを守った。

 未知のウイルスとの戦いでもあった1年。4月7日、福岡にも緊急事態宣言が出された。先行き不透明な中でチームは感染防止のため8班に分かれて練習を行うなど再出発。そんな中、最前線で戦う医療従事者が飲食店などで入店を拒否されるなど、誹謗(ひぼう)中傷が繰り返された。

 「何でこういうことが起きるのか…」。信じられなかった。すぐに行動に移す。選手も、球団も動いた。鷹の祭典で着用する帽子、ユニホームには医療従事者への感謝の気持ちを込めた青、感染防止の決意を示す黄色を入れた。17万枚のレプリカユニホームを県内の医療従事者に届けた。

 「感謝と元気を届ける。その思いは強かった。医療従事者の方の思い、言葉、言霊。目に見えるものではないが、それが力になった。人と人とのつながり、つなぐ心。僕らは力をもらえた」と工藤監督は話した。

 例年以上に各選手のコンディションに目を光らせた。開幕は約3カ月も遅れ、8度の優勝を誇る得意の交流戦もなくなった。143から120試合に減ったとはいえ、序盤は9週連続で同一カード6連戦が組まれ、9月以降は9週連続で金曜日が移動試合となる過密日程。先発陣は和田、石川が3度、東浜は1度、出場選手登録を抹消し登板間隔を空けた。谷間では笠谷、大竹ら若手を起用。救援陣の3連投も禁止した。

 遠征先でホテル出発前にはトレーナー陣を交えオンラインでミーティングを実施。個々のコンディションを把握した上でゲームプランを組み立てた。故障明けの中村晃、柳田、グラシアルを日替わりでDH起用。栗原、周東ら若手も積極的に使った。タレントがそろっている中、先発オーダーは111試合で実に105通りだった。

 今月9日にロッテにゲーム差なしまで猛追されたが、絶妙な手綱さばきで余力を残しているだけに「ここからだ」と切り替えられた。翌日から破竹の12連勝。真の強さを見せた。連勝中の16日からはデータの活用法を変更。シーズンを通した打率、得点圏打率ではなく、直近9試合の数字を基に打順を決めた。ベンチ入りの全選手を信頼しているからこそできる変更。15年の監督就任後、選手の気を引き締めるために節目で招集してミーティングを行ってきたが、今年は一度もなかった。

 この日、全員が試合前の練習で9月15日に急逝した川村さんの写真やイラストがデザインされたTシャツを着用。工藤監督も「たくさんの勇気と笑顔を与えてくれた人。川村君と一緒に戦う」と語っていた。チーム一丸でたどり着いた頂点。全国のファン、そして天国の川村さんにも吉報を届けた。(川島 毅洋)

続きを表示

この記事のフォト

2020年10月27日のニュース