ヤクルト・歳内 1633日ぶり甲子園で感謝の90球 5回途中降板もスタンドから大きな拍手

[ 2020年10月17日 05:30 ]

セ・リーグ   ヤクルト0―5阪神 ( 2020年10月16日    甲子園 )

<神・ヤ>初回甲子園のマウンドで先発登板する歳内(撮影・後藤 正志)
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 ヤクルトの歳内宏明投手(27)が16日、独立リーグ・香川からNPB復帰後で初めて古巣・阪神戦に先発。16年4月27日以来、1633日ぶりとなる甲子園での登板は5回途中90球、2失点でチームも敗れたが、降板時にはスタンドから大きな拍手を浴びた。右肩故障、戦力外など幾多の困難を乗り越えた右腕が力投。最下位に低迷するチームにおいて存在感は増している。

 マウンドを降りた歳内は阪神ファンからの、大きな、温かい拍手を聞いた。「もう少し長いイニングを投げたかった…」。ベンチに座り、タオルで顔を覆う。数十秒、動かなかった。まだ戦いのさなかだ。悔しさ、NPBのユニホームを着て聖地に戻った感慨、湧き上がる全ての感情を抑え込み、顔を上げた。

 1633日ぶりの甲子園。先発投手としてアナウンスされると1万1605人で埋まったスタンド全体から拍手を浴びた。右肩痛や戦力外を乗り越え、独立リーグも経験して帰ってきた男を誰もが称えた。序盤は「古巣相手ということで気合が入り、初回から少し力んでしまった」というが糸原、糸井からスプリットで連続三振。西勇との緊張感のある投げ合いで球数が増え、4回1/3を8安打2失点で降板したが「楽しみ」と話していた凱旋登板で強く腕を振った。

 兵庫県尼崎市出身。祖父母の家からは自転車で約10分と甲子園は身近な存在だった。特別な場所と実感したのは中1の時。宝塚ボーイズの5年先輩にあたる駒大苫小牧のエース・田中将大(現ヤンキース)が06年夏の甲子園決勝・早実戦で投げる姿をスタンド観戦した。「ここで投げたい…」。おぼろげな夢が確かな目標となった。

 福島の聖光学院で2度甲子園に出場し、11年ドラフト2位で阪神入団。念願はかなったが右肩痛との戦いの始まりでもあった。決して楽しい思い出ばかりではないが、親身になって故障からの復活を待ってもらい、昨年オフの戦力外通告の際には職員として再出発するオファーもくれた。現役にこだわって退団し、独立リーグ・香川の門を叩いたが、この日は古巣への感謝の思いも白球に込めた。

 「4回、5回と粘れず失点してしまい悔しい」と歳内。苦労人の生きざま、そして反骨精神は、借金21で最下位に沈むチームに大きな影響を与えている。(君島 圭介)

 ▼ヤクルト・高津監督 いろんな思いも感情の高ぶりもあっただろうが、意外とコントロールよく、空振りも取れていた。よく投げた。(交代は)少し球が浮いてきたから。

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