ロッテ・井上 「なんで僕は泣いている?」 号泣サヨナラ打 ソフトバンクに2差離されん

[ 2020年10月14日 05:30 ]

パ・リーグ   ロッテ4-3楽天 ( 2020年10月13日    ZOZOマリン )

<ロ・楽>9回1死一塁、右中間を破るサヨナラ打を放った井上(撮影・長久保豊)
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 アジャ、男泣き…。首位のソフトバンクを追う2位のロッテは13日、楽天戦で劇的なサヨナラ勝利。9回1死一塁で井上晴哉内野手(31)が右中間二塁打を放って試合を決めた。打撃は低調気味で7回までの3打席も凡退していた長距離砲は、歓喜の輪の中で号泣。3位チームとの接戦を制し、首位との2ゲーム差を維持した。

 歓喜のハイタッチを交わしながら、井上は「なんで、僕は泣いているんですか?」と周囲に聞いて回った。悔しさ、ふがいなさ、そしてそれを一気に上回ってきた喜び…。心の中でさまざまな感情が渦巻き、自然と涙があふれた。

 ユニホームと同様、目を真っ赤にしながら受けたヒーローインタビュー。「期待に応えられなくて…。どうしても応えたくて、どうしても打ちたかったので…。何とかしました」と3打席凡退で迎えた9回の一打を振り返った。ただ、チームは優勝に向けた激闘の最中でもあり、涙を流したことには「今日は自分の私情を持ち込んでしまって、すいませんでした」と謝罪。体重114キロの巨漢は責任感が強く、誰よりも優しい。そんな人柄が目に残る涙ににじんだ。

 歓喜の一打は同点の9回1死一塁で生まれた。ブセニッツのカットボールを右中間へ。一塁走者・福田秀は打球が飛んだ瞬間にスタートを切っていた。「打った感触は覚えていない。秀平さんが走ってくれたおかげ」。18年以来となるサヨナラ打を放ったヒーローは自身の打撃を誇らず、チームに今季5度目の劇勝を呼んだ先輩の激走に感謝した。

 自信を失いかけていた。チームは今月上旬に新型コロナウイルス集団感染が判明し、荻野、角中、清田ら主力が離脱。高卒2年目の藤原ら緊急昇格した若手が必死にプレーする中で「自分が足を引っ張っている…」と落ち込んだ。1ゲーム差で敵地に乗り込んだ前カードの首位・ソフトバンクとの3連戦(9~11日)は13打数2安打、7三振。チームも1勝2敗と負け越し、2ゲーム差に広がった。

 12日は完全オフだったが自宅で自身の打撃映像に食い入った。普段ならば試合後にチェックし、家庭に仕事は持ち込まない。幼稚園に通う愛息と遊ぶが、今回は追い込まれていた。ただ、つかの間の気分転換も野球で「子供と野球で遊んだ。どのみち、野球でした」と笑う。反省を生かし、家族愛もバットに込め、結果につなげた。

 0―3から逆転し、首位との2ゲーム差を維持。普段は冷静な井口監督も「最後に打つべき人が打った。今の状態がどうのこうのでなく、やってきたことを全て出すだけ」と興奮気味に振り返る。05年以来のリーグ制覇へ、とにかく勝ち続けるしかない。井上の男泣きは、ナインに大きな勇気を与えたはずだ。(横市 勇)

 ○…ロッテが9回に井上の右中間二塁打で楽天にサヨナラ勝ち。井上のサヨナラ安打は18年8月25日オリックス戦以来3本目。今季の殊勲安打はチームトップの17本目となり勝負強さを発揮している。ロッテのサヨナラ勝ちは今季5度目、逆転勝ちも27度目でともにリーグ最多。今季は54勝のうち、半分が逆転勝ちとなっている。

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