「先生」さすがです――西武・ニールが見せつけたエースとしての“矜持”

[ 2020年10月14日 09:00 ]

<ロ・西18>好投した西武先発・ニール(撮影・沢田 明徳)
Photo By スポニチ

 ニール先生、ごめんなさい。あの日以来、記者のこの思いは続いている。「あの日」とは10月2日のロッテ戦。西武の助っ人は、7回を投げて1安打4四球無失点で延長10回、1―0の勝利に貢献した。

 登板前日にあたる1日の取材。聞きたいことがあった。「勝利への執念」と「四球」についてだ。エースの今季の投球には不満が多い。昨年6月20日から今年の7月17日にかけて13連勝をマークした大黒柱だが、勝負どころの四球、制球の甘さもありピリッとしない(13日現在で4勝6敗)。クオリティースタート(QS、6回以上&自責3点以下)の登板後は、チームの結果に関わらず満足する談話が出ることもある。

 だが、クライマックスシリーズ進出の可能性も残る中、記者はニールに「相手が無失点なら俺も無失点でいく」という意地の投球を期待し続けていた。9月25日の楽天戦も、4―2と勝ち越した直後の6回に先頭の茂木に四球。続く島内の右中間三塁打で降板し4失点。すっきりしなかった。

 実際、1日に質問をぶつけた。勝利への執念については「無失点は大事だが完璧な投球は難しい。QSは1つの目安だね」。四球には「昨年と比べたら多いと思う」。ともに淡々とした回答。記者は「あすもまた、すっきりしないな」と思っていた。

 それがどうだ。2日のマウンドで、右腕は今季最高の投球を見せた。5回までは打者15人で片付けた。その勢いは8回以降の救援陣の無失点継投にもつながった。登板後の談話は「いい投球ができたよ。四球もいくつか出して残念だけど、中には状況的に出してもいい四球もあったしね」というものだ。

 これには記者もうなった。1日の質問に対し「これでどうだい?」と言わんばかりに答えている。四球にもしっかり触れて。意地を感じた。結局、その次の登板だった9日の楽天戦も、6回2失点で4勝目をつかんだ。

 紳士的態度で「先生」とも呼ばれる31歳。チームの戦いは、まだ。だが、「あの日」のロッテ戦で記者に芽生えた先生への敬意が、最後までブレないことだけは確かだ。(記者コラム・大木 穂高)

続きを表示

2020年10月14日のニュース