五十嵐亮太という男 豪腕が描いた繊細なタッチの「ゴッホ」の模写

[ 2020年10月11日 12:00 ]

五十嵐亮太投手が趣味で模写したゴッホの名作「自画像」(五十嵐亮太提供)
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 ヤクルトの五十嵐亮太投手(41)が、今季限りで現役を引退することが10日、分かった。この日までに球団と話し合い、決断に至った。近日中に正式発表される。

 今でも目を疑ったことを覚えている。2014年のリーグ優勝企画で五十嵐が当時、熱中していた名画の模写を見せてもらった。それは驚くほど丁寧かつ、正確に写された「ゴッホ」だった。

 「ゴッホでも自画像は1週間くらい、かかりましたね」

 10年に行ったゴッホの展示会で購入した一冊の作品集。そこから好みのものを選び「自画像」や「ひまわり」を模写したという。

 五十嵐と言えば160キロ近い剛球のイメージだ。本格的に投手を始めたのが、高校(敬愛学園)からだった理由を尋ねた時には「小学校の時、18個三振取れば18個四球を出す投手でした。自分はそれでいいと思っていたけど、周りからは文句言われたな」と笑った。豪快すぎる男だ。

 その豪腕が、ボールを筆に持ち替え、繊細なタッチの絵を描く。理由は「自分から仕事を乖離(かいり)させるため」だったという。極限の集中力が必要とされる舞台で、この年齢までパフォーマンスを維持してこれたのは「オン」の時と同じくらいの「オフ」を使い分けてきたからではないかと、思う。(2004~17年、ソフトバンク担当・福浦 健太郎)

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