大分商・川瀬149球締め 雰囲気にのまれるも粘った!「最後に甲子園で終われて、最高の3年間」

[ 2020年8月11日 05:30 ]

2020年甲子園高校野球交流試合   大分商1―3花咲徳栄 ( 2020年8月10日    甲子園 )

<花咲徳栄・大分商>力投する大分商・川瀬(撮影・北條 貴史)
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 2点を追う9回2死走者なし。右飛に倒れて最後の打者となった大分商・川瀬は、青空を見上げた。ブラスバンドや観客の声援はない、いつもと違う甲子園での特別な戦いが終わった。

 「負けた悔しさはあるけど、最後に甲子園で終われて、最高の3年間だった」

 エースとして立った憧れのマウンド。序盤は「直球だけでは狙われる」と変化球中心に組み立てた。緩いカーブは相手をビデオで研究した際に捕手・末田から提案され、積極的に使おうとバッテリーで確認。ただ、ワンバウンドするなど制球が不安定で苦しんだ。初回は先頭打者が失策で生き、1死後に連続四球で満塁のピンチを背負った。押し出し死球で先制を許し、次打者には141キロ直球を右前に2点打された。「初めての甲子園で雰囲気だったりに負けてしまった」と唇をかんだ。

 だが、2回以降は毎回走者を許しながらも粘った。6回2死二塁のピンチでは142キロ直球で三振を奪いガッツポーズ。150キロ到達を掲げた直球は最速143キロで「ベストピッチではなかった」と振り返ったが、失点は初回の3点だけに食い止めた。

 花咲徳栄と2校のみで行った開会式。井上主将と共同での選手宣誓の文章は自分で考えた。新型コロナウイルスだけでなく、7月に九州などを襲った豪雨災害にも触れた。「苦しんでいる人が身近にいる。勇気を与えたかった」。自身も中学3年の秋に交通事故で頭蓋骨骨折などの大ケガを負い、生死をさまよう経験をしている。苦難を乗り越え、聖地のマウンドで149球を投げ抜いた。

 大分商OBでソフトバンク内野手の兄・晃からは前日に「悔いのないように頑張れ」とLINEで激励を受けた。勝利は届けられなかったが、かけがえのない財産ができた。プロも注目する右腕は進路について「家族と相談して考えたい」と話し、「悔しさ、経験を上のステージにつなげたい」と前を向いた。

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