磯辺・鵜沢 天国の母へささぐ2打席連発の千葉大会1号&決勝3ラン!

[ 2020年8月3日 05:30 ]

千葉大会1回戦   磯部12―3千葉南 ( 2020年8月2日    青葉の森 )

<千葉県大会 千葉南・磯辺>5回1死一、二塁勝ち越しの3点本塁打を放つ磯辺・鵜沢(撮影・河野 光希)
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 都道府県高野連が独自に開催する代替大会は2日、全国で151試合が行われた。千葉が開幕し、磯辺は千葉南に12―3の7回コールドで快勝。5番の鵜沢達弥内野手(3年)が4回に「千葉1号」を放ち、5回には2打席連発の決勝3ランを放った。昨年11月27日に母・香織さんが劇症型心筋炎のため48歳の若さで死去。天国の母にささげるアーチを2度も描き、恩返しした。

 高く、より高く。天国の母に届けたかった。この姿を見てもらいたかった。鵜沢のバットから放たれた2本のアーチには、そんな思いが込められていた。

 「うまく打てました」。一呼吸置き、こう言った。「自分は親の応援、チームの励ましがあるから打てたんです」。母・香織さんの笑顔が目に浮かんだ。

 昨年11月25日だった。片頭痛を患っていた母の体調が急変。千葉市内の病院に緊急搬送され、劇症型心筋炎と診断された。人工心肺装置を付け、意識のない母に涙を流し、何度も呼び掛けた。「最後の夏の大会で頑張るから」「絶対打つから」。同27日。帰らぬ人となった。48歳だった。

 母は栄養士の資格を持っており、毎朝弁当を作ってくれた。午後9時すぎに練習から帰宅すると「お帰り!」といつも笑顔で出迎えてくれた。「明るい性格で毎試合応援に来てくれたのに…。本当にショックでした」

 前夜、自宅の仏壇で手を合わせて活躍を誓った。4回に右越えソロ、同点とされた5回1死一、二塁では右中間に決勝3ランを放った。人生初の2打席連発。高校通算12本となった。打席では「シャーッ!」と気合を入れる。1打席も無駄にしない気持ちが通じた。スタンドで香織さんの遺影を抱えていた父・慎二さん(52)は声を震わせた。「1本出ればいいと思ったのにまさか2本とは…。(妻がボールに)フッと息を吹きかけたんじゃないですか」

 来月には地元・習志野市の消防職職員採用試験を受ける。「ガタイがいいんだから消防士になった方がいいんじゃない」。生前の母に勧められた。まだやることがある。落ち込んだ時に、支えてくれたナインと一日でも長く戦う。そして天国の母に再びアーチを届ける。(伊藤 幸男)

 ◆鵜沢 達弥(うざわ・たつや)2003年(平15)2月26日生まれ、千葉県習志野市出身の17歳。野球は香澄小1年から始める。習志野第七中時代は内野手で市選抜メンバー入り。憧れは同じ左打者の西武・森。1メートル74、74キロ。右投げ左打ち。

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