田淵幸一氏と森繁和氏が順位予想 セパ2強は一致も、外的要因の多い今季“ダークホース”の逃げ切りも?

[ 2020年6月16日 05:30 ]

対談するスポニチ野球評論家の田淵幸一氏(右)と森繁和氏(撮影・会津 智海)
Photo By スポニチ

 新型コロナウイルスの感染拡大により大幅に延期された2020年の開幕が、いよいよ3日後に迫った。試合数は143試合から120試合に短縮され、コロナ禍の影響でさまざまなルールも変更に。一体どんなシーズンになるのか。本紙評論家陣の田淵幸一氏(73)と森繁和氏(65)が、今季の順位予想とともに特殊なシーズンの行方を熱い議論で占った。 (構成・鈴木 勝巳)

 ◆田淵氏パ予想【1位・西武、2位・ソフトバンク、3位・ロッテ、4位・楽天、5位・オリックス、6位・日本ハム】セ予想【1位・巨人、2位・DeNA、3位・阪神、4位・中日、5位・広島、6位・ヤクルト】

 ◆森氏パ予想【1位・ソフトバンク、2位・西武、3位・楽天、4位・日本ハム、5位・ロッテ、6位・オリックス】セ予想【1位・DeNA、2位・巨人、3位・中日、4位・阪神、5位・広島、6位・ヤクルト】

 田淵 シゲ、久しぶりだな。元気そうだ。

 森 田淵さんも元気でしたか?

 田淵 誰も経験していない、コロナ禍での3カ月遅れの開幕。展開を読むのは難しいが、こうして順位予想ができる。そういう時期が来て良かったよ。

 森 私たちも春季キャンプ以降、ずっとチーム、選手を見ているわけにもいかなかったですから。新人、新外国人選手もゆっくり視察できなかった。

 田淵 スポニチ評論家陣の予想を見ると、1、2位はセ、パとも全員が同じチームだ。私も巨人とDeNA。投打のバランスを考えたら、そうなるだろう。

 森 外国人の出来次第で順位は大きく変わると思います。DeNAはソト、ロペスにオースティンを含めた5人を1軍登録できる。あの打線は怖い。

 田淵 ヤクルト、広島あたりが上位2チームを脅かせるかだな。阪神はボーアが柱になれるか。あとは大山が心配。和製大砲、4番候補として期待しているんだけど。

 森 一番怖いのは主力の故障。それをカバーできるだけのメンバーがそろっているか。できないと一気に崩れる可能性もあります。

 田淵 パはソフトバンクと西武。そこにロッテ、楽天がどう絡むか。ソフトバンクと西武は似たチーム。打力、機動力がある。あとは工藤監督流の小技。広岡さん、森さんに教わった黄金時代の西武の伝統が生きている。

 森 故障者をカバーできる選手層の厚さがあるのがソフトバンク。打線がいい西武は、継投も含めた投手陣にクエスチョンですね。大きく補強した楽天がどうくるか。

 田淵 あとはロッテの佐々木朗。純粋に楽しみだし、見てみたい。でもセ、パとも戦力的に抜けたチームはないし、今季は外的要因が多すぎる。120試合の短期決戦。一気に飛び出したらそのまま、という可能性は大いにある。

 森 スタートダッシュに失敗しても、今までなら交流戦、オールスターと区切りがあった。そこを利用して挽回していたけれど、今年はそれがない。開幕後の30試合をどう戦うか。そこで真夏の一番きつい時季になって、疲労もドッとくる。

 田淵 名馬ハイセイコーのように後ろから、第4コーナーからまくるような野球はできないだろうなあ。

 森 あとはパの同一カード6連戦。これは大変です。特に中継ぎ投手。仮に6連戦の初戦で打たれて失敗しても、翌日からも同じ相手とまだ5試合が待っている。これは起用する方も苦慮します。

 田淵 逆に捕手の視点だと同じ相手と続けて戦うのは打席での立つ位置とか、打者の情報がインプットできる。捕手を代えず、正捕手がいるチームの方が強みが出るかな。

 森 それに星取り。3連戦なら2勝1敗だけど、だったら4勝2敗を狙うのか。一方で6連勝、6連敗なら一気に大差がつく。

 田淵 セ・リーグは4つが屋外球場。6月の梅雨の時季に開幕して、中止になった時の過酷な日程にどう対応するか。そのために1軍登録枠、ベンチ入りの枠が増えたのを利用したい。

 森 リリーフ投手を入れるか野手を入れるかは作戦で変わるでしょうね。エース級の時は野手を入れたり。

 田淵 私はやはり投手を入れたい。準備期間が短く、投手の調整もここまで投げ込みが少ない。先発は100球までに交代することが多くなるだろう。「打高投低」のスタート。中継ぎ陣の負担は大きくなるよ。

 森 ベンチワークが大切になる。延長10回打ち切りのルールも、引き分けを狙いにいくケースも出てくる。同点でも勝ちパターンの継投とか、逆算して起用できるでしょう。

 田淵 そんな今季、改めて脚光を浴びそうなのが強打の2番打者だ。工藤監督が柳田で試したけど、巨人の坂本にDeNA・ソト、日本ハム・大田…。

 森 いい打者が1打席でも多い方が投手は嫌ですから。

 田淵 私が王さんと本塁打王争いをした時も実は2番を打ったんだ。1番じゃちょっと恥ずかしいし…(笑い)。もちろんバントなんてしない。私は現役16年間で犠打は0。変な自慢だけどね。それにしても今年は何が起きるか本当に分からない。記憶に残るシーズンになるだろうけど…。本当に心配なのは選手の故障だ。

 森 投手は登板翌日に違和感、とか言いますが、これだけ間隔が空くと投げている最中に故障することがある。これは大きなケガになる可能性がある。密を避けるために、まだマッサージも簡単にはできないそうだし。

 田淵 選手はケアが本当に大変だろう。

 森 それでもこういう状況の中で野球が始まる。私たちも我慢したけれど、選手はもっと我慢したと思う。野球ができる喜びをプレーで表してほしい。

 田淵 無観客。去年、メジャーリーグを現地で見た時にも感じたが、ミットにボールが収まるパチンッという音、バットがボールをガシッと捉える音…。それが鮮明に聞こえる野球を、ファンはテレビの前でエンジョイしてほしいね。

 《79年から同僚で、所沢1期生》対談した2人は79年に埼玉・所沢に移転した西武ライオンズの1期生でもある。森氏がドラフト1位で西武に入団した79年、田淵氏は阪神からトレードで移籍。「田淵さん、スーパースターでした」と振り返る森氏に、田淵氏は「変なところで気が合ったんだよなあ」と懐かしそうに話した。試合でも何度もバッテリーを組んだが、特に森氏が覚えているのが「大阪のミナミに最初に食事に連れていってもらった」こと。高級な牛タンの店で「本当にうまかった」と笑顔で話した。

 ◆田淵 幸一(たぶち・こういち)1946年(昭21)9月24日生まれ、東京都出身の73歳。法政一から法大に進み、東京六大学リーグ新記録(当時)の22本塁打。68年ドラフト1位で阪神入団し、69年に新人王に輝いた。79年から西武でプレーし84年限りで現役引退。通算成績は1739試合で打率.260、474本塁打、1135打点、18盗塁。75年に本塁打王、90~92年にダイエー(現ソフトバンク)監督。阪神、楽天、北京五輪野球代表のコーチを歴任した。

 ◆森 繁和(もり・しげかず)1954年(昭29)11月18日生まれ、千葉県出身の65歳。駒大では4年春に最高殊勲選手に輝くなどリーグ通算18勝。76年ドラフトはロッテの1位指名を拒否し、住友金属を経て78年ドラフト1位で西武に入団。83年に最優秀救援投手賞。通算成績は344試合で57勝62敗82セーブ、防御率3.73。引退後は西武、日本ハム、横浜、中日のコーチを歴任し、17、18年に中日監督。右投げ右打ち。

続きを表示

2020年6月16日のニュース