ソフトB二保旭 “ズレる魔球”ブレない信念「スタートから全力で」

[ 2020年6月13日 11:30 ]

ソフトバンク・二保
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 開幕から“魔術師”の巧みな投球が見られる。楽しみが増えた。ソフトバンクの二保旭投手(30)のことだ。11日の練習試合・オリックス戦(ペイペイドーム)後にプロ12年目で初の開幕ローテーション入りが内定した。

 「(昨年の)秋キャンプから今季の開幕ローテ入りだけを目標にしてきた。何が何でも結果。力で勝ち取る」と言ってきた。今季の対外試合で5試合20回2/3を投げ19安打5失点6四死球。最長7回を投げた3月21日の練習試合・ロッテ戦(ペイペイドーム)は7安打を浴びたが先頭打者のソロ弾だけの1失点、1四球と見事だった。強気の技巧派として制球良く、打たせて取るのだが何か奥が深い。

 二保の生命線は「ツーシーム」。これが“ズレる魔球”として生きる。エポック社製のおもちゃ「野球盤」で、友人を苦戦させることで空気を悪化させ、ひんしゅくへと追い込む“消える魔球”のようで見ていて面白い。打者が「もらった!」と思って振ると直前に沈んだり、シュートしたり。そしてバットの芯からはズレている。

 ラストアピール成功となった7日の練習試合、阪神戦(甲子園)では2番手登板し4回2安打無失点。無四死球に「80点ですね」と笑った。全46球のうちツーシームが20、カーブ9、チェンジアップ2、スライダー9、フォーク2で直球は4球だけ。捕手も、楽しそうにリードする。持ち球すべてを使って「配球だけは読ませず、(失点)ゼロを重ねる」のが真骨頂。先発投手陣には本格派が多いだけに、このスタイルが、やけに気になる。

 二保の投球時。スコアブックに球速よりも球種を記した方が、味がある。「直球○球だけかい!」と食い気味に聞くと本人も笑う。

 16年春に右肘を手術。今でも直球は「145、6キロは出ます」とは言うがプロで生き抜くために本格派から変化球主体に変えた。森山良二投手コーチも「面構えも良く、マウンド度胸も満点。でも、グッとずらして打たせて取る。この、ギャップがいいよね」と期待を寄せる。二保の“読ませない魔法”は、これから本格化する。「スタートから全力で行く。そして信頼を得る」。球は芯をずらすが、信念は直球勝負。一切のブレは、ない。(記者コラム・井上 満夫)

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2020年6月13日のニュース