森繁和氏&松坂が師弟対談「とことんやれ。クビと言われるまで」「あがきまくって、悪あがきしてやろうと」

[ 2020年2月15日 09:30 ]

森繁和氏と対談する松坂
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 今年からスポニチ評論家に復帰した森繁和氏(65)が、キャンプ地・南郷で西武・松坂大輔投手(39)を直撃。松坂の99年の入団当時の思い出や、中日時代の18年に挙げた4241日ぶりの国内での白星についてなど、笑いの絶えない和やかな雰囲気での「師弟対談」となった。森氏は今年9月に不惑の40歳となる松坂に、とことんまでプレーするようエールを送った。(構成・鈴木 勝巳)

 森 どうだ、絶好調か?

 松坂 いや、絶好調ではないですけど…(笑い)。

 森 9日のブルペン投球も見させてもらった。この時期にあれだけのボール。状態が良くないとできないな。

 松坂 第1クールは抑えめで、第2クールから少しずつ投げようと思っていました。感じも良かった。本当は(101球より)もう少し投げたかったですけど…。

 森 急にやっておかしくなるより、いい状態を長くキープしないと。現時点で今後のプランは?

 松坂 どこに、っていうのはないですけど、実際に開幕はいつもより早いので。できるだけ早く仕上げられるように、とは思っています。

 森 オープン戦は岡崎と岐阜で(昨季まで所属した)中日戦があるぞ。

 松坂 3月3、4日ですね。聞いたら結構寒いらしいので…。でも、オープン戦は(メットライフドームでの3試合以外は)全部、屋外の球場。どちらにしろ、どこかで投げなきゃいけない。西口(投手コーチ)さんには「僕は1試合でも投げられればいいです」と伝えてあります。1試合は投げたい、と。

 森 まあな。何十年もやって経験があるし。さて、西武に14年ぶりに復帰。(昨季未勝利で)今年は「1つぐらい勝ってくれるんじゃないかなあ」と(笑い)。1つ勝たないと2はないから。

 松坂 今年の一つの目標は「まず1勝」というのがあるので。

 森 辻監督も「5回を2、3点で抑えてくれれば、ウチは4点でも5点でも取る自信がある。勝ちに結びつけるチャンスは中日よりはありますよ!」と言っていた。

 松坂 最低は5回ですけど…。

 森 また欲をかいて6、7回とか言うのか?(笑い)。

 松坂 やっぱり、なるべく後ろ(の投手)に負担をかけたくないと考えるのが先発投手だと思うので。短いイニングでもしっかりゲームをつくれるようにしないといけないですね。

 森 大輔が入団したのは99年。俺は西武の2軍投手コーチだった。いろんな選手を見てきたけど、清原(和博)と大輔が入ってきた時は別格だったな。見た瞬間にね。高卒とか関係ない。風格、技術、オーラ…。

 松坂 当時、僕は森さんが「怖い」というのはなかったですね(笑い)。(石井)貴さんとか西口さんからは聞いていましたけど。「こういうことやられた」とか。

 森 そんなに接する機会もなかったしな。俺にとっては貴、西口あたりが(厳しく接した)最後だよ。大輔は14年ぶりの西武復帰。昔と違うところもあるだろう。辻監督と話したけど、今はルーキーも含めてみんな仲が良くてワイワイやってる。俺の時なんか先輩と話なんかできなかったよ。

 松坂 僕も最初は貴さんとか、話し掛けてくれなかった。怖い先輩が何人かいて…。話するようになったのは、オープン戦とかシーズンをこなす中で。「あ、仲間って認められたのかな」と思ったのを覚えています。

 森 そうだな。

 松坂 僕が入団した時の方が、もっとピリピリした感じがあったかも。今見ていても凄く仲がいいです。僕がなじんだ後の、いい雰囲気に似ている。ルーキーの子たちも伸び伸びやっているのを見ると「やっぱり時代なのかな」と。タイミングを見て、何人かとご飯に行ったりはしたいな、と思っています。年が近い子は誘いやすいし。

 森 特に投手はいろいろと聞きたいこともあるだろう。早く彼らが寄ってこられるように、おまえが早く1つ勝たないと。

 松坂 自分が、みんなが来やすい状況をつくっていかなきゃいけない、と思っています。

 森 中日の投手も「松坂さんにいろんなことを聞きたかった」と今、言っているヤツもいるよ。そもそも大輔を(18年に中日で)獲得したのは、勝つか負けるかよりも、その存在がチームにとって役に立つ、と思っていた。西武もそういう部分を期待していると思う。

 松坂 2年前は最初の2試合で勝てなくて、3試合目で初めて勝てた時はうれしかったですね。

 森 こっちが緊張していた。リリーフで失敗したらどうしよう、って。でもスムーズに終わっちゃった。もっとヒヤヒヤさせようと思ったんだけど(笑い)。おまえ、あの試合の時、ロッカーから出てこなかっただろう。

 松坂 いや、流れが変わるのが嫌で…。(9回の)2アウトになるぐらいまで(ベンチの)裏にいましたもん。やっぱり久しぶりだったのでそわそわしていたし、なんか落ち着かないなって。

 森 ベンチにいないから、ウイニングボールをスタンドに投げてやろうかと思ったよ(笑い)。

 松坂 ボールは今でも持っています。

 森 大輔も9月で40歳。引退した方がいいんじゃない?って声もあるかもしれない。でも、ここまできたら「とことん」だな。とことんやってもらいたい。ここが最後になるかもしれないが、球団から「もういらない。クビ」と言われるまで。

 松坂 はい。そういう気持ちはありますし、投げられる場所がある限りは投げ続けたい。一年一年、ガムシャラですね。できるだけ長くやりたいと思っているので。

 森 ゆくゆくは野球界への恩返しでコーチ、監督をやるようになるだろう。そうしたら、じいさまになった俺が孫と一緒に観戦に来て、外野でやじるのが夢だよ。野球界のために頑張って。

 松坂 今は1年、あがいてあがいてあがきまくって、悪あがきしてやろうと思っています。

 ▽松坂の国内4241日ぶりの白星 中日移籍1年目の18年4月30日のDeNA戦(ナゴヤドーム)。それまで2試合で未勝利だった松坂は、6回114球を投げて8四死球も3安打1失点と奮闘。西武時代の06年9月19日のソフトバンク戦(インボイス西武)以来、4241日ぶりの白星を挙げた。お立ち台では「小さい子は分からない。もっとヒーローインタビューやテレビに出て、顔を覚えてもらえるよう頑張る」と笑顔を振りまいた。

 ◆松坂 大輔(まつざか・だいすけ)1980年(昭55)9月13日生まれ、東京都出身の39歳。横浜では3年時に甲子園春夏連覇。98年ドラフト1位で西武入団。1年目に16勝で新人王、最多勝に輝いた。01年に沢村賞受賞。07年にレッドソックスに移籍し、同年にワールドシリーズ制覇。インディアンス、メッツを経て、15年にソフトバンクで日本球界復帰。18年に中日に移籍し、6勝を挙げてカムバック賞。1メートル82、92キロ。右投げ右打ち。

 ◆森 繁和(もり・しげかず)1954年(昭29)11月18日生まれ、千葉県出身の65歳。駒大では4年春に最高殊勲選手に輝くなどリーグ通算18勝。76年ドラフトはロッテの1位指名を拒否し、住友金属を経て78年ドラフト1位で西武に入団。83年に最優秀救援投手賞。通算成績は344試合で57勝62敗82セーブ、防御率3.73。引退後は西武、日本ハム、横浜、中日のコーチを歴任し、17、18年に中日監督。

 ≪背筋伸ばす松坂に森氏「あの頃は俺も寮に隠れて…」≫練習後、球場の一室で行われた対談。背筋をピンと伸ばした松坂は「森さんはドラゴンズで監督と選手という立場でやって…。こういう形でまた話すとは思っていなかった」。話題は99年の松坂の新人時代にも及んだ。2軍投手コーチだった森氏とは「夜食の時とか、いつも寮の食堂でしゃべっていたのは覚えています。ウチの父(諭さん)が釣りが好きだったので、(森氏の趣味の)釣りの話とかもしましたね」。松坂は若獅子寮に住んでいたが「あの頃は俺も寮に隠れて泊まっていたから」と森氏。これには松坂も「隠れて?」と驚きながら大笑いしていた。笑いの絶えない、和やかな雰囲気の対談。森氏は「あれからもう20年以上か…」と懐かしそうだった。 (遊軍・鈴木 勝巳)

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