飛躍を期すオリ榊原翼 病床の父に届けたプロ初勝利の記念球

[ 2020年1月9日 12:02 ]

オリックス・榊原翼
Photo By スポニチ

 新年を迎え、さらなる飛躍を期すオリックス・榊原翼投手にとって、気持ちを昂ぶらせるには最高の瞬間だった。元日、病床の父に、プロ初勝利の記念球を届けた時だ。

 「渡すことができました。最初は父は“いやいや”という感じで遠慮していたんですけど、もらってくれました。嬉しかったです」

 昨年4月17日の日本ハム戦(京セラ)。6回1失点。守護神・増井が最後の打者を打ち取り、手渡されたウイニングボール。球団初の育成ドラフト出身での勝利投手となってつかんだ贈り物だった。

 「父は話はできないんですが、顔を見たら笑顔を見せてくれるんです」。小学4年生の時。父・和夫さんは脳梗塞を発症。それ以来、和夫さんは入院生活を続けており見舞えるのは年に1度ほど。昨年も元日に顔を見せていた。

 浦和学院(埼玉)から16年育成ドラフト2位で入団。酒井育成コーチらの指導を仰ぎ、球速は150キロ超を計測するまでに成長した。1年目は2軍で13試合に登板し2勝1敗3セーブ、防御率1・46。支配下登録をつかんだ18年は5試合に登板し能力の一端を示すと、昨季は先発ローテに定着。13試合に先発し3勝4敗、防御率2・72。夏場に右肩痛で離脱し規定投球回には届かなかったが、10試合連続でクオリティースタート(QS=6回以上を投げ、自責点3以下)を挙げるなどQS率76・92%をマーク。最優秀防御率のタイトルを獲得し12球団トップの80・00%を記録した山本に迫る驚異的な数字を示すなど、着実に成長曲線を描いている。

 マウンドでは、雄叫びを上げるなど闘志全開の投げっぷりは好感を呼ぶ。グラウンドを離れても、誰にでも慕われる人柄。春季キャンプ休養日の2月上旬には、いつも率先して宮崎市清武町にある「みなみのかぜ支援学校」を慰問。体育館で児童と積極的に触れ合い、旺盛なサービス精神で笑顔を誘い続ける。

 チームは昨季、エース山岡、山本の二枚看板を確立。このダブルエースは球界を代表する好投手と言っていいほどの存在感を発揮し始めている。2人に続く3番手、4番手投手の台頭が鍵を握る。「昨年の前半戦は良かった部分もあるので、故障なく、しっかり投げられれば結果もついてくると思う」と榊原。昨季5年連続Bクラスとなる最下位に沈んだチームを、上位浮上に導く快投を披露する。(記者コラム・湯澤 涼) 

続きを表示

2020年1月9日のニュース