悲運の男、西武・西口投手コーチ ノーノー未遂よりも印象深い2試合とは

[ 2019年12月1日 09:00 ]

2005年5月13日の巨人戦でノーヒットノーランにあと1人としながら清水(左)に本塁打を浴びる西武・西口
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 今季はソフトバンク・千賀、中日・大野雄が達成したノーヒットノーラン。大記録が生まれるたびに話題になるのが、かつて西武のエースだった西口投手コーチだ。自身の引退セレモニーのスピーチでも「ノーヒットノーラン未遂2回。完全試合未遂1回」と自虐的に話したように、あと一歩のところでノーヒットノーラン、完全試合を達成できなかったため、「悲運の男」とも呼ばれている。

 だが、西口コーチにとって未遂試合より印象深い登板が2試合あるという。

 (1)96年4月14日。「177球投げて、10回2/3…。せっかくここままで投げたのに…」。神戸で行われたオリックス戦。1―1で突入した延長11回2死。ニールに投じた177球目のフォークが落ちきらずに真ん中へ。ニールがフォークと自覚しないほどの「失投だった」痛恨の1球は右中間席に着弾し、サヨナラ負けした。20年以上前の試合も、鮮明に事細かく振り返り「ノーヒットノーランとかより、負けた試合の方が覚えている」と笑う。

 (2)97年9月15日。またしても神戸で行われたオリックス戦だ。当初は3戦目に先発予定だったが、台風で中止になるだろうと予想され、当時の東尾監督に呼ばれ「ベンチに入ってくれ」と2戦目から中継ぎ待機となった。その2戦目は7回から3回55球を投げ、セーブを挙げた。当時の紙面には「明日も3イニングぐらいはいけますよ」と意気込みが語られているが、迎えた3戦目。「前の日に3回投げているから6回からはないだろう」。内心ではそう思いながらブルペンに行った直後に電話が鳴り「まさか。もう6回から?」。しかし、マウンドに上がれば無心で4回59球を投げ抜き、無失点に抑えて勝利投手に。「リーグ優勝がかかっていたし、体の疲れを感じずに投げられた」。それでも当時、先発は中5日の登板間隔。急きょ中継ぎ待機となったことで間隔は中4日となり、しかも連投で計7回。現在では考えられないようなハードな登板も「今では良い思い出。良く投げたな」と振り返る。

 そんなタフネス右腕だった西口コーチは来季、ブルペン担当からベンチ担当に変わる。リーグ3連覇と悲願の日本一に向け、継投策などで手腕を発揮してくれるだろう。(記者コラム・武本 万里絵)

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