星稜・奥川 江川に並んだ23K!涙の甲子園新伝説 令和初タイブレーク14回165球完投 

[ 2019年8月18日 05:30 ]

第101回全国高校野球選手権大会11日目 3回戦   星稜4-1智弁和歌山 ( 2019年8月17日    甲子園 )

校歌を歌うとき一人涙する星稜・奥川(中央)(撮影・奥 調)
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 星稜(石川)が智弁和歌山(和歌山)との激闘を制し、24年ぶりの8強へ進んだ。プロ注目の右腕、奥川恭伸投手(3年)が23三振を奪うなどタイブレークを含む14回165球を投げ抜き、3安打1失点に抑えた。延長戦では右ふくらはぎをつりながらも気迫あふれる力投を見せ、勝利の後に涙をこぼした。

 左中間席へ消えていく白球を一塁走者だった奥川は静かに目で追った。「勝ったのかな?と不思議な感覚だった」。延長14回、今大会初のタイブレークの末につかんだサヨナラ勝利。泣かないと決めていたのに熱い涙は自然に頬を伝った。

 「“日本一を取ってくれ”と黒川キャプテンに言われ、込み上げてくるものがあった」

 感涙にむせびながら校歌を歌い上げ、充実感と疲労感が混じり合う心地よさが体を包んだ。

 覚悟を決め、マウンドに立った。「自分の全てを出し切らないと、勝てる相手ではない」。自己最速の154キロ直球を軸にスライダー、チェンジアップ、フォークボールなど全球種を使い、三振の山を築いた。失点は失策が起点となった1点のみ。9回までに17個の三振を奪った。しかし、試合は終わらない。1―1で突入した延長戦は死闘と化した。

 11回2死、アクシデントが肉体を襲う。右ふくらはぎをつった影響でフォームのバランスを崩し、初めての四球を与えた。昨夏の済美(愛媛)との2回戦でも先発して同じ場所をつって4回1失点で降板。延長13回にサヨナラ満塁弾で敗れ、涙に暮れた。もう同じ失敗は繰り返したくなかった。

 「思い出したけど、絶対に抑えてやるという気持ちだった」

 応急処置で完全復活。智弁和歌山・黒川主将から内山を通じて渡された漢方薬も飲んだ。「智弁の強さはそういうところにもあるのかなと思った」。好敵手に敬意を払い、全力を尽くした。

 タイブレークの延長13回には1死一、二塁から池田、綾原をともに152キロ直球で空振り三振。11、14回以外は毎回23奪三振で73年の江川卓(作新学院)に並び、林和成監督に「こんな子には、もう一生巡り合わない。あの投球を特等席から見られたのは幸せ者」とまで言わせた。魂の165球。「投げ切るつもりだった。14回まで行くとは思わなかったですが…」と笑った。

 18日の準々決勝。連投の可能性について「監督が決めること」と強調した上で「明日に向けて準備はしたい」と戦う姿勢は崩さない。唯一無二の存在が星稜を悲願の頂点へと導く。(桜井 克也)

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