【内田雅也の追球】「手応え」に通じる「左足」――球宴明け初戦に見た阪神の姿勢

[ 2019年7月16日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神2-4中日 ( 2019年7月15日    ナゴヤD )

6回、先頭打者で出塁後、一塁けん制球をもらう近本(撮影・成瀬 徹)
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 阪神で悔やまれるのは8回裏2死無走者、0ボール―2ストライクから大島洋平に浴びた左前打だろう。直前に外角154キロ直球でいわゆる「着払い」の空振りを奪っていた。その直後のカーブだった。

 ただし、配球は難しいのでさて置く。あのカーブもほぼ真ん中で、低めにいっていれば、打ち取れていたかもしれない。

 この2死一塁から中日の外国人3、4番、ソイロ・アルモンテ、ダヤン・ビシエドに連続二塁打を浴び、ピアース・ジョンソンは降板、敗戦投手となった。勝ちパターンの継投で落としたのは確かに痛いが、ジョンソンでも、もちろん負けることもある。

 それよりも、オールスター・ブレーク(球宴休み)明け初戦という節目である。シーズン残り試合にかけるチームの姿勢に目をやりたい。

 たとえば一時勝ち越した6回表の得点は小さな積み重ねが生んでいた。

 先頭・近本光司が中前打で出塁。俊足を気にした大野雄大は再三再四(実際には6球)、けん制球を放った。けん制はうまく、2度、投球でも帰塁していた。走れはしなかったが、打者への集中力をそいだことだろう。続く糸原健斗は二塁右に転がし、近本を進めた。こうして糸井嘉男の中前適時打につなげた。

 監督・矢野燿大はリーグ戦再開に向け「全員で勝つ」という旨の話をしていた。「1人で勝つというチームじゃない。1個のアウトでも(走者が)前に進むように、1個でもファウルを打つとか……。そういう野球ができたら手応えがある」

 つまり、各人が小さなことを積み上げ、チームとしての勝利を目指すという姿勢を強調していたのである。

 ならば、得点にはならなかったが、4回表の大山悠輔をぜひ記しておきたい。2死から四球で出た。しかもカウント0ボール―2ストライクから粘り、見極めての四球だった。
 一塁走者となると、大きなリードを取った。ナゴヤドームの各ベースの周囲にはアンツーカーの赤土が敷かれている。通常、走者は次塁に近い右足が緑の人工芝にかかる程度だ。近本もそうだった。だが、大山は左足まで完全に人工芝を踏んでいたのだ。

 今季盗塁2個と決して走る選手ではない。意外と言える大きなリードでけん制球を2球放らせた。あの緑の芝生の上で目立っていた左足が次打者ジェフリー・マルテの二塁打を呼んだのだと思いたい。

 同様に、ジョンソンの失点もリーグ盗塁数最多(14日現在)の大島の足が気になったのだろうか。2死一塁からの初球、速球をアルモンテに痛打された。二塁代走・遠藤一星も気になり、2度プレートを外した。そしてまた適時二塁打を浴びたのだった。
 走者が打者を助けるのである。ならば、あの左足に明日を見たい。全員で勝つという矢野の「手応え」に通じているのではないだろうか。=敬称略=(編集委員)

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