時代の変遷だけではない…阪神・島本が希望し、快諾した能見との“ペアリング”

[ 2019年7月1日 10:40 ]

<ロ・神>最後を締めた島本(右)をねぎらう矢野監督(撮影・大森 寛明)
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 仕事場で後輩が先輩に頼み事をしたい…。「断られたらどうしよう」「生意気に思われたら…」。内容にもよるだろうが、自分に置き換えれば少し気が引けるし、あれこれ迷ってる間にタイミングを逸してしまうのがオチだ。ただ、それが自身の成長につながる「好機」だと分かっていれば、勇気を振り絞れる気がする。

 そんなことを、阪神のある“ペア”を見ながら感じていた。26歳の島本と40歳のベテラン・能見。この2人は今、試合前練習で必ずコンビを組んでキャッチボールを行っている。歳の近い選手同士で、年齢差があれば歳上が声をかけるのが、ごく普通の流れだとは思うが、島本に聞けば、自ら願い出たという。

 「ずっと岩崎さんとやっていたんですけど、岩崎さんがインフルエンザになって、そこで、能見さんに自分からお願いしました」。当然ながら、明確な理由があった。実は昨年、不振のため2軍調整となった能見と初めてキャッチボールを行う機会に恵まれた。「鳴尾浜でやらせていただいて。キャッチボールから能見さんはバランスを意識されて投げられていて、自分にとってすごく勉強になる時間なんです。能見さんからも“シマ、今日は調子良いな”とか“疲れてるな”とか言ってもらえるので、気づけることも多いんです」。そんな経緯があって、開幕から1軍で奮闘する後輩が、再びペアリングを希望した。

 一方で、志願された能見は、若き日の自分を振り返りながら、首を振った。「先輩にそんなん言えなかったよ。怖くてね…。今の時代と昔は違うのかなと」。先輩と後輩の間には、今に比べて、とてつもなく高い壁があったのだろう。それでも、年齢とともに立場も変わった投手陣最年長は、ある意味“あり得なかった”申し出を快諾し、1軍経験の浅い島本にキャッチボールを通じて助言を送る。

 一回り以上、年の違う2人のキャッチボールには時代の変遷だけでなく、後輩への技術の伝承、そして先輩へのリスペクトが凝縮されている。(記者コラム・遠藤 礼) 

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