近本には「基礎」がある

[ 2019年6月16日 06:00 ]

交流戦   阪神2―3オリックス ( 2019年6月15日    京セラD )

<オ・神>3回2死二塁、近本は三振に倒れる=捕手・若月(撮影・奥 調)
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 阪神・近本の取材のため、試合前練習中にオリックスのベンチへ足を運んだ。社高の先輩にあたるオリックス・下山真二打撃コーチに話を聞くためだ。

 そもそも社高は兵庫県内屈指の強豪として知られるが、甲子園出場は春1回のみ。それでも昨年ドラフトでは、同校出身の近本、楽天・辰己が1位指名を受けるなど計8人のプロ野球選手を輩出している。そこには「何か」があるに違いない。

 現在、指導者、選手で球界に在籍する同校OBは上記3人。そこで今や猛虎の不動の1番と言える近本の「基礎」を、下山コーチに聞いてみたかった。すると「社の体育科は体育指導者を育成する学科。だから野球だけじゃなくバレーボール、サッカー、バスケ、ラグビー、ゴルフもしたし、やり投げや砲丸投げ、水球もした。球技は全部やったと思う。各競技の体の使い方も教われたのが大きい。体の使い方、ケアの仕方、鍛え方、力の出し方、伝え方も教わるから」と教えてくれた。野球だけでなく多様な競技に取り組むことで、結果的に野球につながるヒント、引き出しを培う環境が整っているわけだ。さらに先輩は「特に“意識性の原則”というのを覚えている。やらされている…ではなく、目的を持ってやれば、確実に効果が出るということを学んだ。それは何事にも通じること」と続けた。

 話を聞きながら、下山コーチが現役時代、1メートル75とプロでは小柄な部類ながら通算45本塁打のパンチ力を誇ったことを思い出した。そしてくしくも1メートル70、72キロの近本も長打力を秘める。体の使い方がうまく、自らが持てる力を最大限に発揮できているからだろう。しかも近本は本拠地の試合後には30分ほどランニングマシンで走る、独自のケアに取り組んでいるとも聞いたことがある。これぞ、「社イズム」と言えるかもしれない。最後に実際に対じした後輩について聞くと「打撃フォームも申し分ないし、足が速い選手は体全体の筋肉が強いからスイングも強い」と目を細めた。

 その近本も、試合では4打数無安打に封じられた。5日に打率・321まで上昇も、以降9試合は40打数3安打、打率・075と疲れが見える。そしてこの日、サヨナラ負けを喫したチームも、切り込み隊長が不振の9試合は3勝5敗1分けと元気がない。だが、社高で「基礎」を培った近本なら心配ご無用だ。豊富な引き出しをフル活用して復調し、再び猛虎を引っ張ってくれるはずだ。(前トラ番キャップ・惟任貴信)

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2019年6月16日のニュース