【内田雅也の追球】「事故」より「大局観」――阪神、今季2度目の終盤逆転負け

[ 2019年6月15日 08:30 ]

交流戦   阪神4-6オリックス ( 2019年6月14日    京セラD )

藤川の暴投を梅野も止められず
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 阪神には悔しい敗戦だった。それは8回裏、同点を許す暴投で本塁ベースカバーに入った藤川が両足を広げ、天を仰いだ格好で見てとれた。

 フリーエージェント(FA)で移籍した先発の西が古巣オリックス相手に好投し、勝利投手の権利を手にしていた。誰もが西に勝ち星を付けてあげたいと懸命だったはずだ。それが西野真弘に浴びた三塁打で敗戦投手にしてしまった。

 記録担当に確認した。今季、阪神が逆転で敗れたのは5度目だった。12球団ダントツの少なさで、他11球団はすべて2桁以上の逆転負けがある。7回終了時点でリードした試合は2敗目で、25勝3分けの高勝率を誇る。18試合(19回)連続無失点だった藤川にも失点がついた。つまり、めったに起きない「事故」だったのだ。

 長いペナントレースを戦ううえでは、こうしたレアケースに固執せず、シーズンを見通した「大局観」が必要である。ツイッターなどで人気のプロウト(プロと素人を合わせた造語)野球評論家「お股ニキ」氏が著書『セイバーメトリクスの落とし穴』(光文社新書)で書いていた。

 むろん、反省点はある。継投機は遅くはなかったか。同点の暴投を梅野は何とか手前に落とせなかったか。決勝三塁打のフォークは高かった。いや、その前の8回表無死一、二塁での大山併殺打も痛かった……。

 敗因を探れば、いくらでも出てくるのが野球である。囲碁や将棋のような感想戦があれば、多くの意見が交わされるだろう。それが野球の醍醐味(だいごみ)でもある。

 <野球には正解がない>と先の書でお股ニキ氏が書いている。<だからこそ、その場でさまざまな思考を巡らせながら、後で答え合わせをしていくのがおもしろい>。

 ただし、その答えはない。日本ハム・栗山英樹監督が取材者から監督に就任して最初のシーズンを終えた2012年10月に出した著書『覚悟』(KKベストセラーズ)に<そう簡単に答えは見つからない>とあった。<答えが見つからない理由も実際に監督を経験してみて初めてわかった。そもそも、そこに答えはないのだ。なぜなら、みんな答えを求めて戦っているわけではなく「結果」を求めて戦っているから>。

 だとすれば、この夜ばかりは、反省や感想戦は早めに切り上げたい。リーグ優勝8度の名将、西本幸雄さん(故人=元本紙評論家)の言葉を思い出す。評論原稿で<カエルの面に小便>と書いたことがあった。顔にかけられたカエルは何と鳴く? つまり<ケロッとしておけ>という意味だった。(編集委員)

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2019年6月15日のニュース