オリックス本田仁海が自己最速154キロ 右肘故障を乗り越えて成長中

[ 2019年6月6日 06:00 ]

右肘手術から復帰し、順調な姿を見せるオリックスの本田仁海投手
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 オリックスの次世代スターを発掘する当コラム。第17回目は本田仁海投手(19)を取り上げる。

 6月2日のウエスタン・リーグ、広島戦は大きな成長の跡を見せた試合だった。復帰後初先発で迎えた初回。先頭の大盛に自己最速タイの151キロをマークした。しかし、これは序の口だ。セットポジションからの投球となっても、堂林には152キロ、153キロと球速を上げ、最後は4番下水流に154キロで空振り三振。自己最速を軽々と更新した。2回を1安打無失点。「肘の痛みもないし、問題ないです。154キロが出たのは正直うれしかった」と手応えを感じた一戦となった。

 辛かった時期がよみがえる。昨年、ドラフト4位で星槎国際湘南から入団し、5月には2軍で先発ローテーション入りした。輝かしい未来が待っていたはずの中で、8月に突然、右肘の痛みに襲われた。球団から9月に疲労骨折部の固定術を受けることが発表され、同時に、リハビリに専念するため育成選手契約を結ぶことも決定。形式的とはいえ戦力外通告をされ、入団当時にもらった背番号もはくだつされた。19歳には酷な運命だった。

 「正直辛かったです。手術を受けて、不安もあったし、去年151キロを出していた当時に戻れるのか。みんなが投げている姿を見て、焦りもあった。野球をしたくてプロに入ったのに、仕事ができないので」

 電話で報告した母・もえみさんの声は、受話器越しでも分かるほど心配していた。これまでで初めてという大きな故障。母は手術の日に大阪市内の病院まで訪れ、無事を祈ったという。これ以上心配を掛けたくない。このまま終わりたくない――。そんな本田の気持ちが通じたのか、リハビリは順調に進んだ。1月24日には、硬式球で初めてキャッチボールする姿があった。「回復が少し早いみたいなんです」。笑顔も戻っていた。

 そして、このリハビリが成長を支えた。入団当初、70キロちょっとだった細身だった体に、剛速球を支える筋肉は足りなかったが、地道なトレーニングの結果、復帰後に自己最速をマークするほどになった。「ケガをして学んだことも、たくさんありました。肘を使えないので、下半身のトレーニングができたし、自分と向き合えた」。陰でコツコツとこなしたシャドーピッチングでは自分と向き合い、体のバランスも向上した。成果は、復帰してからの結果にも大きく現れている。

 4月27日のウエスタン・リーグ、広島戦で復帰登板を果たすと、6月2日までの6試合はいずれも無失点。「感覚は前よりも今の方が良い」と進化した姿を見せている。5月25日の交流戦ヤクルト戦では2回を投げて初セーブをマーク。球団内では、本格的に支配下選手登録の復帰を検討中で「最優先」との声も挙がっているほどの金の卵だ。

 初セーブの記念球は大事に保管している。「直接渡したいので、今は持っています」と、心配を掛けた母に直接渡す機会を待っている。桐蔭学園時代に、高橋由伸ら数々の教え子をプロに導いた恩師の土屋恵三郎監督にも、うれしい復帰の報告ができた。「これから、もっと投げたいですね」。投球フォームは若干チームメートの山本由伸に似ているが、先輩に続きブレークする日はそんなに遠くないかもしれない。
(当コラムはスポニチホームページで不定期連載中)

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