阪神・中谷、執念の一打 延長12回代打で“幻のV打”

[ 2019年5月9日 05:30 ]

セ・リーグ   阪神7―7ヤクルト ( 2019年5月8日    神宮 )

12回1死一、二塁、中谷は中越えに2点適時二塁打を放ちガッツポーズ(撮影・坂田 高浩)
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 会心の当たりが、左中間を真っ二つに切り裂く。ずっと真っ暗だった視界が一気に開けた。延長12回1死一、二塁。代打でこの日初めての打席に立った阪神・中谷が、大仕事だ。

 「ああいう場面で打てたのは良かった」

 近藤の投じた3球目の直球を振り抜いた。2者を生還させ、一時は勝ち越しとなる2点二塁打。これで神宮球場では今季8打数4安打、2本塁打7打点となり、相性抜群の敵地で快音が響いた。土壇場でヤクルトに同点とされて“幻のV打”となっても、自身にとっては苦境を打開する価値ある1本になった。

 安打を放ったのは、4月23日のDeNA戦以来、実に出場10試合ぶり。12打席連続無安打で7三振の惨状に危機感は募った。結果の出ない日々は、文字通り「悪夢」。決して、大げさでなく、プロ野球人生でののるかそるかの大きな分かれ道とさえ思っていた。

 「何をやっても駄目。すべてをマイナスに考えてしまって…。このままだと終わってしまう。本当に分岐点だと思ってます」

 そんな時、弱々しい拳を握り直せたのは、後輩の晴れ舞台だった。同じ九州出身で昨年までチームメートだった松田遼が、6日のオリックス戦で2回無失点の快投を演じてヒーローインタビューを受けた。ナイターでの試合後、ネットニュースで見慣れた松田遼の照れ笑いを目にして「まっちゃん、頑張ってるなぁ。すごい」と本音を漏らしていた。可愛がってきた後輩にも力をもらい、長いトンネルをようやく抜けた。

 「(復調の)きっかけになれば良いなと思います。そう(次につなげる)していかないといけないと思う」

 「光」は確かに見えた。両手に残る感触をもう忘れない。中谷将大が息を吹き返した。(遠藤 礼) 

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2019年5月9日のニュース