阪神・矢野監督、広澤克実氏に語ったV構想「60敗にこだわりたい」

[ 2019年2月14日 09:01 ]

「ぶち破れ!オレがヤル」をスローガンに掲げる矢野監督に、広澤克実氏が直撃(撮影・大森 寛明)
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 阪神・矢野燿大監督(50)が本紙評論家の広澤克実氏の直撃取材に応え、13年ぶりリーグ優勝へのシナリオを明かした。近本光司外野手(24=大阪ガス)、木浪聖也内野手(24=Honda)の両新人の開幕戦抜てきやジェフリー・マルテ内野手(27=エンゼルス)の5番起用など構想の一端を披露した。

 広澤 「やり方よりもあり方」といういい言葉がある。以前、矢野監督が選手に目標を作ってから逆算する考えを話していたのを覚えている。矢野監督=チームにとっての「あり方」というのは優勝することだと思う。そこに向けての逆算はしている?

 矢野監督 まず僕はそこで、ファンを喜ばせたいということを「あり方」にしたんですよ。優勝することを「あり方」にしたら、僕自身すごくしんどくなるのとちゃうかなと思って。

 広澤 「ファンを喜ばせたい」の中に優勝することも含まれていると?

 矢野監督 もちろん、そうです。でも、優勝するための逆算はしていますよ。

 広澤 それは?

 矢野監督 今思っているのは、優勝するチームでも1年間で60敗近くはする。その60敗にこだわろうと。野村克也さんも「勝ちに不思議の勝ちあり」ってよくおっしゃってたけど、勝手に勝つ時ってあるじゃないですか。

 広澤 逆に「負けに不思議の負けなし」だ。

 矢野監督 負ける時って何か原因がありますよね。でも、そこで粘りを見せるとか、諦めない気持ちとかがあれば相手のミスも起こりうるかもしれないですし、逆転勝ちも増えていくと思います。85勝しようとか考えると難しいなとか、しんどいなとなりそうですが、まずは60敗をそういう風に戦おうと考えていまして、開幕前に選手にも伝えようと思っています。

 広澤 これまで何人もの監督と話をしてきたが、負け試合にこだわっている監督は記憶にないねえ。

 矢野監督 僕も「勝ちたい。勝ちたい」と思ってはいるはずなんです。シーズンが始まれば、もっとそうなってくると思うのですが、勝つことばかりにこだわると重くなりそうで、負け試合にこだわる方が挑戦していきやすい気がしますね。

 広澤 野村さんは「0点に抑えれば負けない」と話していたけど、似ているよね。60敗の数字を減らしていければ、必ず80勝くらいはする計算になるわけだから。

 矢野監督 いまはそう思ってキャンプを送っています。

 広澤 では投手陣について。順調にいくと先発枠はメッセンジャー、西、ガルシアは入ってくるから残り3枠の争い。

 矢野監督 そうなりますね。

 広澤 まず最初に藤浪の名前を出さないといけない。

 矢野監督 あまり細かいことを今は言わないようにしています。2年くらい苦しんでいて、底はもう抜けているので、いいところを見てあげたいというのがあります。

 広澤 あとは才木、望月、岩貞、秋山、馬場、小野、青柳…。岩崎はどうなんだろう?

 矢野監督 両方考えています。中継ぎをやりながら、ロング救援、そしてチーム事情で先発もあるかもしれませんね。

 広澤 ルーキーの斎藤は?

 矢野監督 斎藤は中ですね。あと、先発では高橋遥もいますよ。負傷明けなので1年間通しでは期待できないですが。広澤さんに言われたように先発投手は豊富かなと思います。ただ救援陣は年齢が上がってきているので、今は先発で調整している望月が昨年は中継ぎやりましたが、チーム事情で配置転換はしていく必要性が出てくるかもしれませんね。

 広澤 セットアッパーには桑原の名前が挙がる。クローザーは球児が候補の一人なのかな?

 矢野監督 固定はした方が投手は投げやすいとは思うのですが、誰かは状態を見て決めていきたい。球児はやる気満々で頼もしいですし、あとはドリス、ジョンソンも含めて3人の中から決めることになりそうですね。

 広澤 就任してから、そして今回はキャンプインしてから見させてもらって、矢野監督は選手を怒らない。

 矢野監督 そうですねえ。

 広澤 褒めて育てるタイプだね。

 矢野監督 いいところは褒めますねえ。昨年(2軍監督)も怒ることはなかったかな。

 広澤 私も大学野球に少し関わっている。今の子供は怒ったら萎縮して伸びない。昔ながらの指導法をやればエラいことになっちゃう!

 矢野監督 付いてこれないでしょうね(笑い)。

 広澤 理想の監督像って誰? いろいろな監督の下でやってきて、どのタイプを目指したい?

 矢野監督 ずるいですが、皆さんを混ぜたいですね。星野さんみたいに情熱をもって戦いたいですし、野村さんの考えてやる野球もそうですし。でも(選手と)近い存在ではいたいですね。監督だから…と壁を作ることはないですね。自分で言うのは恥ずかしいですが、新しいタイプでやっていきたいですね。強引という言葉でいいのか分かりませんが、そういうのはないですね。

 広澤 選手に寄り添っていくのは、見ていてよく分かる。

 矢野監督 僕らが育った時代とは今はもう違います。何を目指すのか、はっきりとさせてあげないといけない。野球でも何でもアプローチの仕方が何個もあって、いろいろなやり方が存在している。例えば僕らが子供の頃にはなかったユーチューバーという仕事が今はあるように、何でも新しいモノが良いとは思いませんが、今の時代に合ったものに変えていきたい。若い頃は考えを聞いてもらえず、頭ごなしにやっていた。でも、今はなぜなのか、どう思っているのかを聞いていくことが必要だと感じています。

 広澤 素晴らしいですね。話を聞いてくれる指導者って、昔はいたかなあ。いなかったよね?

 矢野監督 ははははは(笑い)。時代ですから!

 広澤 そうそう、時代です!! スローガンの『ぶち破れ! オレがヤル』は、矢野監督の発案なんですか? どういう意味でしょう。

 矢野監督 『オレがヤル』は僕が言ったんですが、例えば打席に入るときも「オレが決める」とか、マウンドの投手も「オレが抑える」とか、個人個人がヒーローになれるようなもの。でも、これまでは選手間で共有しているものが多くて、そこにファンも球団も裏方さんも全部含めたものにしたかった。球団が考えた『ぶち破れ』を付け加えました。

 広澤 打者の感覚で言うと、ここぞっていう場面で打てるかどうかが本当に大切。この「オレがヤル」の気持ちがなければいい場面で打てない。

 矢野監督 ホント、そうだと思います。

 広澤 最後に他球団の情報って気になりますか? 

 矢野監督 新聞とかテレビのニュースで見ますが、良いか悪いか分からないですが、それは気にならないんですよ。まだ、今は、うちの選手をどうするか…ですね。まだどうにもならないことですから。もちろんスコアラーは他球団を見にいってくれてますけどね。

 広澤 歴代の監督がキャンプの頃は楽しいって言っていた。今は楽しいですか?

 矢野監督 そうですね、今は本当に楽しいですね。

 広澤 実戦に入れば、ああいう打順、こういう作戦とか試したいことがたくさんあって…。

 矢野監督 ポジション争いで誰が出てくるのかなっていう楽しみばかりですね。実績組もいれば、伸びしろ組もいて。

 広澤 ペナントレースが始まれば胃が痛くなりますから、今のうちくらいはね、楽しまないとね。今日は、ありがとうございました。期待しています!

 矢野監督 頑張ります!

 (※3)昨季の阪神は77盗塁(盗塁死21)、広島は95盗塁(盗塁死49)。

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